中央競馬のためにならない話

客観的事実・データから妄想を繰り広げます。

ツイッター@horsedatacも少しやってます

500万下の身で3歳三冠に複数参戦した馬

先週の桜花賞。500万条件馬ながらチューリップ賞3着によって桜花賞へ駒を進めていたメデタシ号が4着になり、優駿牝馬への優先出走権を得ました。これにより、メデタシ号は今後故障による戦線離脱がない限り、500万下の身で桜花賞にも優駿牝馬にも出走することになります。牡馬三冠にしても牝馬三冠にしても、このようなことになるには賞金を加算することなくトライアルレースで上位入線することが必要。ある意味賞金上位で出走するよりはるかに難しい条件ですので、今回のメデタシ号のケースはレアケースと言えそう。それでは、過去に500万条件のままで三冠レース(3歳限定時のエリザベス女王杯含む)に複数参戦した例はどれだけいたのでしょうか。牡馬牝馬問わず、1987年以降で調べてみました。


馬名1レース目2レース目
ワンダーレジスト1987桜花賞チューリップ賞3着)優駿牝馬4歳牝馬特別3着)
ヤマフリアル1989桜花賞チューリップ賞2着)優駿牝馬(賞金クリア?)
カネトシシェーバー1996桜花賞(アネモネS2着)優駿牝馬桜花賞4着)
エイシンカチータ1997優駿牝馬(スイートピーS2着)秋華賞(クイーンS3着)
ギミーシェルター2004桜花賞(アネモネS2着)優駿牝馬(スイートピーS2着)
レインダンス2007桜花賞チューリップ賞3着)優駿牝馬(賞金クリア)
ルージュバンブー2009桜花賞チューリップ賞3着)優駿牝馬(賞金クリア)
メデタシ2011桜花賞チューリップ賞3着)優駿牝馬桜花賞4着)(予定)


1996年までの3頭について付記しますと、この3頭はいずれも桜花賞では4着以内です。ヤマフリアル号はそこから直行しているものの、ワンダーレジスト号は4歳牝馬特別に、カネトシシェーバー号は自己条件の端午賞に出走していることから、この頃までは桜花賞4着以内に出走権付与ということがなされていなかったのでは、と推測します。つまり、ヤマフリアル号も賞金面で大丈夫だったから出走できたのではないか、と。いつから桜花賞4着以内馬に優先出走権を付与するようになったかは調べ切れませんでしたが、以上の前提で眺めてみます。
牝馬三冠の場合、年によっては優駿牝馬には500万下でも出走できるため、牝馬で春の2戦にともに出走、という例はたまにありますね。ただ、トライアル競走を潜り抜けて春の両GIにたどりついた例はワンダーレジスト号とギミーシェルター号の2例のみで、無事出走できればメデタシ号で3例目になります。やはりレアケースと言えましょうし、それだけ難しいことであるとも言えそうです。
500万下の身で春のクラシックに出走して、かつそのまま秋の三冠にも出走、という例はエイシンカチータ号のみ。そもそも秋の三冠競走に出走するにはまずトライアル競走を使う必要があって、500万下の馬ではトライアル競走への出走自体が抽選や除外になる可能性が高いわけですから、相当ハードルが高いです。ということで、三冠皆勤の500万下の馬もいません。メデタシ号には可能性がありますが、優駿牝馬で賞金を加算せず、夏競馬の自己条件で勝利せず、秋華賞トライアル競走の抽選を突破し、かつ賞金を加算しない着順で優先出走権を得るという針の穴を通すような厳しい条件が課されます。陣営としても自己条件を勝たないでいいということはないでしょうし、可能性は低そう。


調べられる範囲では、牡馬で複数の三冠競走に出走した500万下の馬はいませんでした。三冠競走は牝馬三冠に比べて基本ボーダーが高いですからね…。今年の皐月賞特別登録段階では、除外予定馬を除くとスプリングS3着のステラロッサ号が唯一その権利を持っていることになります。現在の出走規定では東京優駿トライアル競走は優先出走権獲得=賞金加算になりますので、現在の賞金のままで皐月賞東京優駿の連続出走を果たすには皐月賞3〜4着しかありません。スプリングSでのリスポリ騎手のコメントを見る限り、可能性はゼロではないと思われますがどうでしょう。珍偉業の達成に期待したいです。


なお、500万下条件馬が秋の三冠競走に出走した例は元から狭き門だけあって非常に少ないです。既に述べたエイシンカチータ号を除くと以下の通り。


馬名出走レース
ムーンライトマリー1988エリザベス女王杯(賞金クリア)
スティールキャスト1994菊花賞(賞金クリア)
タヤスメドウ1998菊花賞京都新聞杯3着)
ゴーステディ2000菊花賞(賞金クリア)
フェリシタル2000菊花賞(賞金クリア)
シアリアスバイオ2002秋華賞(紫苑S2着)


春と違って、秋は菊花賞の方に多く500万下の馬が出走していますね。レアケースであることには変わりないですが、距離が嫌われるのか、広き門になることもたまにあるようです。


<4/13追記>
優駿牝馬の優先出走権について情報をいただきました。1996年、カネトシシェーバー号の年の時点で桜花賞4着以内馬に優先出走権を付与することになっていたようですね。とすると、カネトシシェーバー号は優先出走権がありながら、本番前に敢えて自己条件を使ったことに。これはこれでレアケースのように思いますので、桜花賞4着以内→任意のレース→優駿牝馬、というローテーションを取った例を調べてみました。


馬名桜花賞次走
メジロラモーヌ19861着4歳牝馬特別1着
マヤノジョウオ19862着4歳牝馬特別6着
マックスビューティ19871着4歳牝馬特別1着
ワンダーレジスト19873着4歳牝馬特別3着
アラホウトク19881着4歳牝馬特別1着
シヨノロマン19882着4歳牝馬特別2着
スイートローザンヌ19884着4歳牝馬特別4着
スカーレットブーケ19914着4歳牝馬特別2着
ヤマヒサローレル19934着4歳牝馬特別1着
カネトシシェーバー19964着端午賞3着
フサイチエアデール19992着4歳牝馬特別2着
カネトシディザイア20024着スイートピーS6着


カネトシシェーバー号の後も、優先出走権を持ちながら前哨戦を使っている馬がいますね。フサイチエアデール号もこのローテーションだとは。これらの多くは、優先出走権は獲ったものの距離への対応が不安だから前哨戦で様子を見て、その結果本番も使うことにした、ということなんでしょうかね。桜花賞次走が4歳牝馬特別(現在のフローラS)ではなかった2頭がいずれもカネトシ冠というのは偶然なのでしょうか。馬主に何か思うところがあるのでしょうか…。
上記から桜花賞4着以内馬に優先出走権を付与するようになった時期を推測しますと、1990年前後ということになるでしょうか。1988年までは、桜花賞を優勝しても4歳牝馬特別に出走している例があることから、少なくともこの時期には優先出走権が付与されなかったと推測します。優先出走権があろうがなかろうが、優勝馬は賞金面で問題なく出走できるように思いますけど。本番前の一叩きがトレンドだったのでしょうか。