中央競馬のためにならない話

客観的事実・データから妄想を繰り広げます。

ツイッター@horsedatacも少しやってます

東京優駿の乗り替わり

週末は中央競馬界の一大イベント、東京優駿。その空気は唯一無二、中央競馬に従事するホースマンの誰もが憧れる勲章です。
今年は皐月賞横綱相撲で優勝したロゴタイプ号が1番人気になりそうで、差がない人気でキズナ号、そして皐月賞の上位馬であるエピファネイア号、コディーノ号といった人気順でしょうか。ロゴタイプ号は大舞台を前にして、短期免許の都合もあるとはいえM.デムーロ騎手から弟のC.デムーロ騎手に乗り替わり予定。実績的はどうしても兄に劣るだけに、不安視する向きもあることでしょう。
それ以上に問題なのは、よく知られている「乗り替わりではダービーを勝てない」というデータ。これが守られるなら、ロゴタイプ号はもちろん、有力馬ではウィリアムズ騎手騎乗予定のコディーノ号も優勝できない、ということになります。実際どうでしょうか。1986年以降の東京優駿の騎手について、継続騎乗のケースと乗り替わりのケースで成績を比べてみます。

◆前走騎手別集計
  集計期間:1986. 5.25 〜 2012. 5.27
  ソート:着別度数順
------------------------------------------------------------------------
前走騎手  着別度数                     勝率  連対率 複勝率 単回値 複回値
------------------------------------------------------------------------
◆同騎手  27- 19- 20- 22- 16-258/362    7.5%  12.7%  18.2%     51     79
◆乗替り   0-  8-  7-  5- 11-119/150    0.0%   5.3%  10.0%      0     52
------------------------------------------------------------------------


実に見事な差が出ています。ちなみに、乗り替わりで上位人気に支持された馬は以下のとおり。5番人気以内で抽出しました。

------------------------------------------
日付   馬名               騎手      人  着
------------------------------------------
120527 グランデッツァ     池添謙一   4  10
110529 デボネア           デットー   3  12
100530 ローズキングダム   後藤浩輝   5  2
100530 ルーラーシップ     四位洋文   4  5
090531 セイウンワンダー   福永祐一   3  13
070527 アドマイヤオーラ   岩田康誠   4  3
060528 アドマイヤメイン   柴田善臣   4  2
050529 ブレーヴハート     デザーモ   5  9
040530 ハーツクライ       横山典弘   5  2
020526 シンボリクリスエス 岡部幸雄   3  2
020526 ノーリーズン       蛯名正義   2  8
020526 タイガーカフェ     四位洋文   5  10
010527 ダンツフレーム     河内洋     3  2
010527 テンザンセイザ     四位洋文   5  6
980607 センターフレッシュ 角田晃一   5  13
960602 サクラスピードオー 蛯名正義   4  5
950528 オースミベスト     武豊       3  8
940529 ナムラコクオー     上村洋行   2  6
930530 マイシンザン       田原成貴   4  5
910526 イイデセゾン       柴田政人   4  3
900527 ハクタイセイ       武豊       2  5
890528 ロングシンホニー   河内洋     1  5
------------------------------------------


いま思えばこんなに人気にならなくても…という馬もいますが、シンボリクリスエス号、ハーツクライ号などのちのGI馬も複数います。それでいて、27年乗り替わりで優勝できていないとなると、けっこう真実味のあるデータと言えそうです。ただ、この期間では、乗り替わりかつ1番人気というのはロングシンホニー号のみ。単勝は6倍と押し出された1番人気だったようですから、今回のロゴタイプ号とは違ったケースと見ることもできましょう。乗り替わりの1番人気なら勝てる、という結果になるかもしれません。
優駿達の蹄跡」さま*1を参考に、さらに過去の競走へ遡ってみました。すると、さすがに乗り替わりでも優勝した例は出てきています。1985年のシリウスシンボリ号、1960年のコダマ号、1954年のゴールデンウエーブ号、1934年のフレーモア号。79回の歴史の中で4回ですね。1985年を上記データに含めなかったのは恣意的なわけではなく、TARGETで検索できる期間の関係です。多いか少ないかとなると圧倒的に少なく、東京優駿単勝馬券に関しては乗り替わりというだけで評価を下げることもできそうです。もっとも、三連勝系の馬券が売り上げの多くを占める中、乗り替わりでも2着3着には全く支障がない(連対率、複勝率はやや落ちますが)ので、こうしたデータも馬券上はあまり意味がないかもしれませんね。


それにしてもこれだけの差がつくのはどういうことなのでしょうね。普通に考えると、ダービーを優勝するような名馬は鞍上が手放さない、乗り替わりになるのにはそれなりの理由がある、継続騎乗で人馬の一体感が云々、といったあたりが浮かびますが、何もデビュー戦から騎乗しなければならないわけではないんですよね。東京優駿とその前走だけ騎乗して優勝したケースも見られますし、騎乗経験があって手綱が戻ってきた場合でも優勝したケースが久しく見られていないわけで、ほんとうに乗り替わりにさえならなければ、というレベル。不思議なものです。ロゴタイプ号はやむを得ない事情があるとはいえ、コディーノ号の乗り替わりなどは調教師の意向というより馬主主導に映ります(5月22日付記事*2で師が自ら決めたと語っています)、このあたりを理解しての指示なのでしょうか。この件で横山典騎手と藤沢和厩舎は絶縁状態に至ったようですし、結果的に誰も得をしない乗り替わりになる可能性もゼロではないように思います。

*1:http://ahonoora.com/

*2:日刊スポーツ「コディーノ乗り替わり真意は…/ダービー」 http://www.nikkansports.com/race/news/p-rc-tp0-20130522-1131011.html