中央競馬のためにならない話

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今年の新人騎手が残した珍記録

3月になり、2017年の新人騎手がデビューしました。今年は横山典騎手をして「モノが違う」と言わしめた横山武騎手、木幡家最後の矢・木幡育騎手など5人がデビュー。川又騎手が人気馬に騎乗したこともあり、初週から初勝利、あわよくば特別競走優勝の目もあるかとは思いましたが、蓋を開けてみると5人全員馬券圏内なしという結果に終わりました。各騎手、師匠がそれなりに馬を用意して臨んだだけにこの結果は寂しいです。
では、過去の競馬学校卒の新人騎手の初週の成績はどうだったのでしょうか。過去に初週馬券圏内なしという世代はあったのでしょうか? 調べてみました。

デビュー年デビュー人数成績世代最多勝騎手備考
198613人(0.3.1.16)横山典弘
19878人(0.2.0.10)武豊1日
19889人(1.3.2.40)菊沢隆徳
198910人(0.1.6.24)田中勝春
19909人(1.1.3.28)江田照男
199111人(1.0.0.54)藤田伸二
19928人(0.1.1.15)後藤浩輝1日
19938人(1.0.2.24)小林徹弥
19949人(3.1.5.33)幸英明
19958人(3.1.1.38)野元昭嘉
199610人(3.2.2.51)福永祐一
199713人(3.2.5.56)秋山真一郎
19989人(1.1.1.18)池添謙一1日
19999人(0.2.0.38)北村宏司
20009人(2.3.0.34)嘉藤貴行
200110人(2.1.1.32)川島信二
20028人(1.2.2.27)田辺裕信
200310人(1.1.0.20)松岡正海
20049人(1.0.3.44)川田将雅
20056人(0.0.0.22)大野拓弥
20068人(2.1.2.27)北村友一
20079人(2.0.1.36)浜中俊
20083人(1.0.0.14)三浦皇成
20095人(2.0.2.7)松山弘平1日
20106人(1.1.2.19)川須栄彦
20117人(1.2.4.26)横山和生
20125人(1.1.1.16)菱田裕二
20134人(0.1.3.19)岩崎翼
20146人(2.0.1.18)松若風馬
20154人(0.0.1.11)鮫島克駿1日
20166人(0.3.2.31)木幡巧也
20175人(0.0.0.33)
※免許再取得の西田騎手は1995年、柴田未騎手は1996年で集計。日曜デビューの世代(備考欄の「1日」)は日曜の結果のみを記載。


競馬学校卒の新人騎手が寄ってたかって初週に全員馬券圏外だったのは、2005年以来2度目*1という椿事だったようです。手も足も出なかったという年がもう少しあるかと思いましたが、思った以上に少ないですね…。2005年は掲示板は3回でしたが、今年は掲示板が2回。トータルの騎乗数を考えると、ある意味過去最低の戦績ということになるかもしれません*2
もちろん、初週がダメだったからこの世代はダメだとするのはあまりに尚早ではありますし、2005年デビュー世代からは後にGI競走を優勝する大野騎手も出ています。それでも、大丈夫なのかな、と思ってしまうのは事実。少しはレースに慣れ、中京開催もスタートする来週から、そんな不安を吹き飛ばすような活躍を期待したいです。

*1:1期生が1985年デビューで記録が調べられませんが、人数は多いのでたぶん全員馬券圏外ということはないと思われます

*2:掲示板の回数で言えば、2008年デビュー世代も初週2回です

ツイッターに書いた小ネタデータ集

ツイッターに書いた小ネタのデータへのリンクをまとめました。それぞれの日付の時点のデータなので、古くなっているものも多数あります。また、とにかく長いのでお気をつけください。我ながら面白いものがけっこうあるな…と思いますが、自分が興味を持ったことを調べたのですから当然ですね。ツイッターで書いたら随時まとめておきます。

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現3歳は最強世代なのか

先週の京成杯オータムハンデを3歳馬のロードクエスト号が優勝しました。ハンデ戦とはいえ、GI・2着馬ということもあって馬齢重量±0kgと決してハンデに恵まれたわけではないですし、強い内容でしたね。これで、3歳馬の古馬重賞優勝は函館スプリントSソルヴェイグ号、キーンランドCブランボヌール号に続き3頭目。春の3歳GIは濃い内容のレースが多かったですし、札幌記念で重賞馬とはいえ3歳世代の中では上位とも言いづらいレインボーライン号が3着に健闘したこともあり、現3歳は最強世代だという声が日に日に増しています。感覚としてわからなくもないですが、実際、古馬と対峙した際の数字としてはどうなのでしょうか。過去10年で見てみました。はじめに結論を言うと、「現時点では判断しづらい、秋のGI次第」というものですが、どうぞご覧ください。


まず、9月13日以前の各年について、3歳馬が3歳以上の条件(障碍競走含む)でどのくらい勝っているかを確認しました。例えば今年の3歳世代で勝利数が145/502としているのは、今年ここまでの3歳以上条件502勝中、3歳馬が145勝を挙げていることを示します。1着同着も含めていますが、誤差ということでご了承ください。シェアはレース数に対する3歳馬の勝利比率です。

現年齢勝利数シェア重賞成績重賞優勝馬
200613歳117/51322.8%(4.1.1.13)ソリッドプラチナムサチノスイーティーアドマイヤムーンステキシンスケクン
200712歳145/44232.8%(1.4.2.16)クーヴェルチュール
200811歳116/45425.6%(0.1.1.24)
200910歳142/48029.6%(1.4.1.7) グランプリエンゼル
20109歳152/48731.2%(2.1.1.10)アプリコットフィズダッシャーゴーゴー
20118歳123/48525.4%(2.1.1.15)リアルインパクトアヴェンチュラ
20127歳166/51332.4%(3.1.2.19)アイムユアーズエピセアロームレオアクティブ
20136歳126/50125.1%(0.1.1.19)
20145歳139/50127.7%(1.1.1.13)ハープスター
20154歳150/50030.0%(1.1.4.20)アクティブミノル
20163歳145/50228.9%(3.2.1.10)ソルヴェイグブランボヌールロードクエスト


06年のように、重賞では成績がいいのに、条件戦も含めるとかなり落ちる年があるのが面白いですね。今年の3歳馬が3歳以上条件で占める勝ち星の割合は約29%。ここ10年と比べると多くもなく少なくもなく、です。シェア3割超が07年、10年、12年、そして去年。今年は去年を下回っていますが、去年の3歳馬が最強世代と呼ばれた記憶はないです。
インパクトとしては重賞のような高額条件に依るため、重賞成績で見ると、ここまで古馬重賞3勝というのは過去10年と比較しても優秀です。今年は複勝率37.5%と、勝利を挙げつつ、率が高いのが特徴的ですね。下級条件の層が厚いとは言いづらいが、重賞クラスではまずまず、でしょうか。この数字だけで現3歳が最強世代だとは言えないと思います。


高額条件の代表格といえばGI競走。今年の3歳馬は安田記念にも宝塚記念にも出走しなかったのでサンプルがありませんが、昨年までの10年間で3歳馬が古馬GIでどのような成績を挙げたか(年間成績)をまとめました。

現年齢古馬GI成績古馬GI優勝馬
200613歳(2.1.2.23)フサイチパンドラアロンダイト
200712歳(2.1.0.17)アストンマーチャンダイワスカーレット
200811歳(1.1.1.18)リトルアマポーラ
200910歳(0.2.3.18)
20109歳 (3.1.4.22)スノーフェアリーローズキングダムヴィクトワールピサ
20118歳 (2.1.0.16)リアルインパクトオルフェーヴル
20127歳 (2.2.1.12)ジェンティルドンナゴールドシップ
20136歳 (1.2.0.15)メイショウマンボ
20145歳 (0.2.1.15)
20154歳 (0.1.2.15)


3歳馬にとって古馬GIは高い壁なのか、過去10年で3歳の日本調教馬が古馬GIで3勝した例がありません*1。13〜15年は3年間でメイショウマンボ号1頭。4歳以降の成長を全く考慮していない数字ですが、ここ3年の3歳馬の活躍がいまいちなので、内容の濃いレースをしてきた3歳馬に期待がかかっている側面もあるかもしれません。なお、3歳馬の古馬GIでの最多勝は3勝で、直近では02年にシンボリクリスエス号が2勝(天皇賞有馬記念)、ファインモーション号が1勝(エリザベス女王杯)というのがあります。3頭で3勝を挙げた例は、01年にクロフネ号(ジャパンカップダート)、ジャングルポケット号(ジャパンカップ)、マンハッタンカフェ号(有馬記念)が直近。現3歳世代については、古馬GIで2勝できるか、がひとつの指標となりそうですね。3勝だとかなり優秀、4勝なら文句なしです。秋の古馬GIは中山大障害を含め8戦あります。


また、過去10年と現3歳の各世代で、収得賞金(本賞金ではありません)上位5頭を並べてみました。長くやればやるほど上位になりやすい数字なので、収得賞金1位だから世代最強、とは必ずしも言えませんが、各世代で強かった馬・現役の場合は現時点で強い馬をあぶり出しやすくはあると思います。

生年現年齢収得賞金1位収得賞金2位収得賞金3位収得賞金4位収得賞金5位
200313歳アドマイヤムーン キンシャサノキセキメイショウサムソンマツリダゴッホ スーパーホーネット
200412歳ウオッカ ドリームジャーニーダイワスカーレットスクリーンヒーローローレルゲレイロ
200511歳エスポワールシチースマートファルコンアーネストリー オウケンブルースリシルポート
200610歳ブエナビスタ トランセンド ワンダーアキュートトーセンジョーダンセイクリムズン
20079歳 ニホンピロアワーズヴィクトワールピサエイシンフラッシュカレンチャン ドリームバレンチノ
20088歳 オルフェーヴル ロードカナロア グランプリボス リアルインパクト ウインバリアシオン
20097歳 ジェンティルドンナゴールドシップ ジャスタウェイ ホッコータルマエ ストレイトガール
20106歳 コパノリッキー ラブリーデイ エピファネイア ラストインパクト ロゴタイプ
20115歳 モーリス ショウナンパンドラゴールドアクター エイシンヒカリ ヌーヴォレコルト
20124歳 ドゥラメンテ リアルスティール キタサンブラック ミッキークイーン ノンコノユメ
20133歳 マカヒキ メジャーエンブレムシンハライト ラニ ディーマジェスティ


以上3つの比較から総合すると、ここ10年程度の中では、なおかつ先日顕彰馬となったジェンティルドンナ号、屈指の個性派のゴールドシップ号、世界ナンバーワンに輝いたジャスタウェイ号、GI・10勝の金字塔を打ち立てたホッコータルマエ号などを擁し、条件馬を含め3歳時から多くの活躍が見られた09年生まれの世代が最強世代になるのかなと推定されます。この世代は3歳でジャパンカップジェンティルドンナ号)、有馬記念ゴールドシップ号)を優勝していることから、現3歳が最強世代かどうかはこの2レースでどこまでやれるかで判断するのが妥当かと思われます。ただ、4〜6歳の賞金上位馬を見ると、モーリス号やエイシンヒカリ号は2400mや2500mを使わないでしょうし、古馬大将格となるはずだったドゥラメンテ号が抹消、昨年大活躍のラブリーデイ号は使い詰めの影響が出ている感、そうなるとJCや有馬記念の壁となり得るのはゴールドアクター号とキタサンブラック号くらいになるのでしょうか。確かにこうなると両レースを3歳馬が持っていっても不思議はない…かも…。


ちなみに最強世代との誉れ高い1995年生まれ世代(スペシャルウィーク号、グラスワンダー号、エルコンドルパサー号など)は9月13日までの3歳以上条件成績が111/432、シェア25.7%、重賞(0.0.3.3)。古馬GI成績は(3.0.1.12)(エルコンドルパサー号、マイネルラヴ号、グラスワンダー号が優勝)でした。秋口までの3歳以上条件成績が無残なものですが、やはりGI競走での活躍が世代間比較の最重要要素なのかもしれません。

*1:スノーフェアリー号は外国馬