中央競馬のためにならない話

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集計開始以前のMVJを(中央戦績限定で)勝手に集計した

例年あまり話題になることがないですが、JRA賞には「MVJ」という部門表彰があります。Most Valuable Jockeyを略したもので、現在は前年度のMVJに対し、夏に札幌で開催されるワールドオールスタージョッキーズへの出場権が付与される特典があります。MVJの内容についてはJRA公式によると以下の通り。

JRAと地方・海外の指定レースを合わせた成績を「勝利度数」「勝率」「獲得賞金」「騎乗回数」の項目ごとに順位付けをして、その総合得点により受賞者を決定いたします。この決定方法は、厩舎関係者表彰における『優秀騎手賞』に準じており、『MVJ』はその最上位の騎手となります。

この集計結果を見ると、4項目の上位15騎手(勝率は250回以上騎乗の騎手が対象)について15pt、14pt…とポイント化し、そのポイント合計の最上位騎手をMVJとしています。ポイント合計が同じ場合は勝利度数上位をより上位とします。2022年は川田騎手が勝利度数、勝率、獲得賞金で1位で騎手大賞となり、MVJの最右翼かと思われましたが、騎乗数が上位15人にあたらず、戸崎騎手が逆転で獲得しました*1。このように、MVJは騎乗数が評価対象になっているのがポイントで、騎手大賞を獲得するほどの圧倒的な成績を収めても、どんな理由があろうとも騎乗数を絞っていれば逆転される可能性があるところに面白さがあります。競馬は野球、サッカーなどのプロスポーツとはまた違いますが、興行として捉えた時にパフォーマンスを示す機会を多く持つことが競馬界への貢献につながる、と解釈するなら、騎乗数を評価することも理解できます。

さて、MVJは最近設けられた制度で、JRA公式では2013年以降、10年間の記録しかありません。そこで、2013年以前についても同様の手法でMVJが誰であったか、2022年のような逆転現象は発生していたのかを見てみることとしました。先日、MVJの選出方法について疑義を呈したスポニチの記事*2も出ており、「MVJは創設された13年から昨年まで、全て最多勝利騎手が受賞してきた。ノンタイトルでの受賞は今回が初」との記載に、「たまたま13年以降でそうなっただけでは?」とデータを示したい意図も少しあります。ただし、この記事が出る前から集計作業はしていて、この記事がきっかけになったというわけではありません。

TARGET frontier JVを用いて集計する都合上、以下の点が本家MVJと異なります。

・地方や海外の競走の戦績を含まない。
・獲得賞金は「本賞および付加賞の合計。地方交流差額分を含む」とあるが、本賞金(中央競走5着以内で与えられる賞金)のみで集計。

これにより本家と多少の違いが生じます。総合1位の騎手が入れ替わるほどの誤差は発生しないのでは、と思われますが、実際にそうなのかどうか、まずはJRA公式で示されている2013~2022年の近10年分の結果とTARGET frontier JVによる集計との齟齬を確認しました。

2022年 リーディング:川田将雅

順位本家総合ptTARGET総合pt
1戸崎圭太47戸崎圭太50
2川田将雅45川田将雅45
3横山武史42横山武史43
4松山弘平42松山弘平41
5C.ルメール39C.ルメール39
2021年 リーディング:C.ルメール
順位本家総合ptTARGET総合pt
1C.ルメール52C.ルメール52
2松山弘平51松山弘平51
3川田将雅43川田将雅42
4福永祐一40福永祐一40
5横山武史39横山武史38
2020年 リーディング:C.ルメール
順位本家総合ptTARGET総合pt
1C.ルメール54C.ルメール54
2松山弘平49松山弘平49
3川田将雅43川田将雅43
4福永祐一41福永祐一41
5武豊34武豊34
2019年 リーディング:C.ルメール
順位本家総合ptTARGET総合pt
1C.ルメール44C.ルメール44
2川田将雅43川田将雅43
3戸崎圭太43戸崎圭太42
4武豊38福永祐一40
5福永祐一38武豊37
2018年 リーディング:C.ルメール
順位本家総合ptTARGET総合pt
1C.ルメール50C.ルメール50
2戸崎圭太48戸崎圭太48
3M.デムーロ42M.デムーロ42
4川田将雅37川田将雅37
5福永祐一35福永祐一35
2017年 リーディング:C.ルメール
順位本家総合ptTARGET総合pt
1C.ルメール51戸崎圭太52
2戸崎圭太51C.ルメール51
3川田将雅43M.デムーロ42
4M.デムーロ42福永祐一40
5福永祐一40和田竜二39
2016年 リーディング:戸崎圭太
順位本家総合ptTARGET総合pt
1戸崎圭太58戸崎圭太58
2C.ルメール51C.ルメール51
3M.デムーロ42M.デムーロ40
4川田将雅36川田将雅38
5内田博幸36内田博幸36
2015年 リーディング:戸崎圭太
順位本家総合ptTARGET総合pt
1戸崎圭太54戸崎圭太52
2岩田康誠46M.デムーロ42
3M.デムーロ41岩田康誠42
4福永祐一38福永祐一39
5C.ルメール36C.ルメール37
2014年 リーディング:戸崎圭太
順位本家総合ptTARGET総合pt
1戸崎圭太56戸崎圭太55
2岩田康誠53岩田康誠53
3浜中俊43北村宏司45
4福永祐一43浜中俊43
5北村宏司41福永祐一41
2013年 リーディング:福永祐一
順位本家総合ptTARGET総合pt
1福永祐一50福永祐一50
2岩田康誠49浜中俊47
3戸崎圭太46内田博幸47
4内田博幸46戸崎圭太42
5浜中俊45岩田康誠42

2017年のTARGET集計は戸崎騎手の賞金ポイントがJRA公式より高くなった結果、僅差で逆転MVJになっています。公式集計で僅差になる場合はこのような逆転現象が発生する可能性に留意する必要がありますし、ポイントに若干の相違が出る、順位の変動も少しあるものの、概ね総合ポイント1位(MVJになる騎手)への影響は小さいと判断して、引き続き2012年以前のMVJを確認することとしました。そんなわけで、記事タイトルに「中央戦績限定で」と但書をつけています。結果は以下のとおりです。

2012年

順位勝利度数勝率賞金騎乗数総合総合pt
1浜中俊横山典弘岩田康誠幸英明浜中俊49
2蛯名正義福永祐一内田博幸和田竜二岩田康誠47
3岩田康誠蛯名正義福永祐一三浦皇成蛯名正義46
4内田博幸浜中俊蛯名正義北村宏司内田博幸41
5福永祐一内田博幸浜中俊浜中俊福永祐一38
2011年
順位勝利度数勝率賞金騎乗数総合総合pt
1福永祐一福永祐一岩田康誠幸英明岩田康誠54
2岩田康誠川田将雅福永祐一川須栄彦福永祐一53
3川田将雅岩田康誠池添謙一和田竜二蛯名正義38
4蛯名正義横山典弘横山典弘岩田康誠川田将雅37
5横山典弘藤田伸二蛯名正義田辺裕信横山典弘35
2010年
順位勝利度数勝率賞金騎乗数総合総合pt
1横山典弘横山典弘横山典弘幸英明蛯名正義48
2内田博幸武豊蛯名正義和田竜二横山典弘45
3蛯名正義安藤勝己福永祐一北村宏司内田博幸44
4福永祐一藤田伸二内田博幸吉田豊福永祐一39
5松岡正海内田博幸後藤浩輝蛯名正義松岡正海39
2009年
順位勝利度数勝率賞金騎乗数総合総合pt
1内田博幸安藤勝己武豊内田博幸内田博幸57
2武豊武豊内田博幸幸英明武豊45
3岩田康誠内田博幸横山典弘岩田康誠岩田康誠45
4藤田伸二横山典弘藤田伸二和田竜二藤田伸二36
5横山典弘藤田伸二岩田康誠中舘英二横山典弘36
2008年
順位勝利度数勝率賞金騎乗数総合総合pt
1武豊武豊岩田康誠幸英明内田博幸53
2内田博幸安藤勝己安藤勝己内田博幸岩田康誠49
3安藤勝己内田博幸武豊中舘英二武豊43
4岩田康誠横山典弘内田博幸浜中俊安藤勝己41
5後藤浩輝岩田康誠横山典弘岩田康誠後藤浩輝40
2007年
順位勝利度数勝率賞金騎乗数総合総合pt
1武豊安藤勝己武豊幸英明岩田康誠54
2岩田康誠武豊岩田康誠吉田隼人後藤浩輝45
3安藤勝己岩田康誠安藤勝己岩田康誠武豊44
4後藤浩輝藤田伸二蛯名正義後藤浩輝安藤勝己41
5田中勝春横山典弘後藤浩輝中舘英二田中勝春38
2006年
順位勝利度数勝率賞金騎乗数総合総合pt
1武豊武豊武豊岩田康誠藤田伸二51
2藤田伸二安藤勝己安藤勝己中舘英二岩田康誠51
3岩田康誠横山典弘岩田康誠藤田伸二武豊48
4安藤勝己藤田伸二藤田伸二幸英明安藤勝己40
5横山典弘内田博幸福永祐一和田竜二後藤浩輝36
2005年
順位勝利度数勝率賞金騎乗数総合総合pt
1武豊武豊武豊田中勝春武豊58
2横山典弘横山典弘福永祐一中舘英二横山典弘47
3藤田伸二安藤勝己横山典弘武豊藤田伸二47
4福永祐一藤田伸二藤田伸二幸英明福永祐一46
5柴田善臣福永祐一安藤勝己蛯名正義柴田善臣39
2004年
順位勝利度数勝率賞金騎乗数総合総合pt
1武豊武豊武豊柴田善臣武豊59
2柴田善臣安藤勝己安藤勝己武豊柴田善臣53
3安藤勝己O.ペリエ柴田善臣中舘英二藤田伸二43
4藤田伸二横山典弘横山典弘後藤浩輝安藤勝己41
5横山典弘柴田善臣福永祐一藤田伸二横山典弘40
2003年
順位勝利度数勝率賞金騎乗数総合総合pt
1武豊武豊武豊柴田善臣武豊59
2柴田善臣安藤勝己安藤勝己武豊柴田善臣54
3安藤勝己柴田善臣横山典弘藤田伸二藤田伸二46
4藤田伸二蛯名正義柴田善臣蛯名正義蛯名正義46
5蛯名正義藤田伸二蛯名正義中舘英二安藤勝己42
2002年
順位勝利度数勝率賞金騎乗数総合総合pt
1武豊武豊武豊中舘英二柴田善臣52
2柴田善臣横山典弘藤田伸二柴田善臣藤田伸二50
3藤田伸二岡部幸雄柴田善臣田中勝春武豊45
4蛯名正義藤田伸二岡部幸雄蛯名正義蛯名正義42
5横山典弘柴田善臣福永祐一藤田伸二福永祐一36
2001年
順位勝利度数勝率賞金騎乗数総合総合pt
1蛯名正義武豊蛯名正義蛯名正義蛯名正義57
2柴田善臣四位洋文横山典弘柴田善臣柴田善臣52
3岡部幸雄岡部幸雄柴田善臣田中勝春横山典弘42
4中舘英二蛯名正義四位洋文中舘英二岡部幸雄39
5四位洋文柴田善臣岡部幸雄藤田伸二四位洋文37
2000年
順位勝利度数勝率賞金騎乗数総合総合pt
1武豊武豊武豊松永幹夫岡部幸雄50
2岡部幸雄河内洋岡部幸雄中舘英二横山典弘47
3後藤浩輝岡部幸雄横山典弘田中勝春武豊45
4横山典弘横山典弘松永幹夫四位洋文後藤浩輝45
5四位洋文後藤浩輝四位洋文後藤浩輝四位洋文44
1999年
順位勝利度数勝率賞金騎乗数総合総合pt
1武豊武豊武豊武豊武豊60
2蛯名正義岡部幸雄蛯名正義蛯名正義蛯名正義55
3柴田善臣蛯名正義横山典弘柴田善臣柴田善臣48
4岡部幸雄藤田伸二柴田善臣横山典弘横山典弘43
5横山典弘高橋亮的場均的場均藤田伸二38
1998年
順位勝利度数勝率賞金騎乗数総合総合pt
1武豊武豊武豊蛯名正義武豊58
2蛯名正義蛯名正義蛯名正義柴田善臣蛯名正義57
3柴田善臣岡部幸雄横山典弘武豊横山典弘48
4横山典弘横山典弘岡部幸雄松永幹夫柴田善臣47
5岡部幸雄四位洋文柴田善臣横山典弘岡部幸雄40
1997年
順位勝利度数勝率賞金騎乗数総合総合pt
1武豊武豊武豊武豊武豊60
2岡部幸雄岡部幸雄岡部幸雄柴田善臣松永幹夫51
3松永幹夫松永幹夫松永幹夫福永祐一岡部幸雄48
4柴田善臣河内洋横山典弘松永幹夫柴田善臣46
5横山典弘横山典弘柴田善臣蛯名正義横山典弘43
1996年
順位勝利度数勝率賞金騎乗数総合総合pt
1武豊岡部幸雄武豊武豊武豊59
2岡部幸雄武豊横山典弘柴田善臣岡部幸雄53
3横山典弘横山典弘岡部幸雄横山典弘横山典弘53
4蛯名正義河内洋蛯名正義蛯名正義蛯名正義43
5柴田善臣佐藤哲三藤田伸二岡部幸雄柴田善臣40
1995年
順位勝利度数勝率賞金騎乗数総合総合pt
1武豊岡部幸雄武豊横山典弘武豊58
2横山典弘武豊岡部幸雄武豊横山典弘55
3岡部幸雄横山典弘横山典弘松永幹夫岡部幸雄50
4的場均柴田善臣的場均的場均的場均47
5松永幹夫的場均柴田善臣田中勝春柴田善臣42
1994年
順位勝利度数勝率賞金騎乗数総合総合pt
1武豊武豊岡部幸雄的場均岡部幸雄51
2岡部幸雄岡部幸雄武豊田中勝春武豊50
3的場均河内洋南井克巳南井克巳的場均49
4南井克巳角田晃一的場均横山典弘南井克巳49
5柴田善臣南井克巳河内洋松永幹夫柴田善臣40
1993年
順位勝利度数勝率賞金騎乗数総合総合pt
1武豊岡部幸雄武豊武豊武豊59
2岡部幸雄武豊岡部幸雄南井克巳柴田政人50
3柴田政人柴田政人柴田政人的場均南井克巳48
4南井克巳河内洋南井克巳田中勝春岡部幸雄45
5的場均的場均河内洋柴田政人的場均45
1992年
順位勝利度数勝率賞金騎乗数総合総合pt
1武豊岡部幸雄岡部幸雄南井克巳岡部幸雄56
2岡部幸雄武豊南井克巳柴田政人武豊55
3南井克巳南井克巳武豊武豊南井克巳55
4柴田政人角田晃一柴田政人岡部幸雄柴田政人49
5田中勝春柴田政人河内洋田中勝春横山典弘34
1991年
順位勝利度数勝率賞金騎乗数総合総合pt
1岡部幸雄岡部幸雄岡部幸雄南井克巳岡部幸雄57
2武豊増沢末夫武豊武豊武豊55
3南井克巳武豊南井克巳松永幹夫南井克巳49
4増沢末夫角田晃一河内洋岡部幸雄松永幹夫41
5松永幹夫的場均柴田政人岸滋彦増沢末夫40
1990年
順位勝利度数勝率賞金騎乗数総合総合pt
1武豊岡部幸雄武豊武豊武豊57
2岡部幸雄増沢末夫岡部幸雄南井克巳岡部幸雄55
3増沢末夫河内洋柴田政人安田隆行増沢末夫47
4河内洋武豊南井克巳岡部幸雄柴田政人45
5柴田政人柴田政人横山典弘増沢末夫河内洋42
1989年
順位勝利度数勝率賞金騎乗数総合総合pt
1武豊岡部幸雄武豊武豊武豊59
2岡部幸雄武豊岡部幸雄南井克巳柴田政人48
3柴田政人増沢末夫南井克巳松永幹夫松永幹夫47
4松永幹夫柴田政人柴田政人蛯沢誠治岡部幸雄46
5増沢末夫松永幹夫松永幹夫柴田政人増沢末夫41
1988年
順位勝利度数勝率賞金騎乗数総合総合pt
1柴田政人岡部幸雄南井克巳南井克巳柴田政人55
2武豊柴田政人河内洋柴田政人武豊53
3南井克巳武豊武豊武豊南井克巳53
4河内洋河内洋柴田政人河内洋河内洋50
5増沢末夫増沢末夫岡部幸雄増沢末夫増沢末夫43
1987年
順位勝利度数勝率賞金騎乗数総合総合pt
1岡部幸雄岡部幸雄岡部幸雄岡部幸雄岡部幸雄60
2増沢末夫増沢末夫柴田政人南井克巳増沢末夫54
3南井克巳河内洋増沢末夫増沢末夫南井克巳50
4河内洋南井克巳河内洋柴田政人河内洋46
5柴田政人田原成貴南井克巳的場均柴田政人45
1986年
順位勝利度数勝率賞金騎乗数総合総合pt
1河内洋増沢末夫河内洋南井克巳河内洋58
2増沢末夫河内洋増沢末夫河内洋増沢末夫54
3岡部幸雄岡部幸雄岡部幸雄柴田政人岡部幸雄51
4柴田政人田原成貴柴田政人岡部幸雄柴田政人48
5的場均柴田政人南井克巳増沢末夫的場均41

リーディングになったからといってMVJになるわけではない年が多く発生していることがわかります。1986年以降の37年間(正式集計が始まった2013年以降を含む)でリーディング騎手がMVJを獲得していないのは10回。昨年の川田騎手が11年ぶりであったとはいえ、平均すると3,4年に1回はリーディング騎手がMVJではないというのは決して少なくないように思います。武豊騎手は92年から9年連続、1年挟み02年から7年連続リーディングを獲得していますが、この16年でのMVJは9回。少ないとさえ言えます。ノンタイトルでのMVJも2000年、2002年、2006年、2007年、2008年、2010年の6度発生。騎乗数を評価対象にする以上、この現象は何らおかしいなものではないと判断します。

特に00年、02年、06年の武豊騎手は、勝利度数、勝率、賞金で1位でありながら、騎乗数が影響してMVJ集計では3位と、2位ですらない結果に。各年で1位になった岡部騎手、柴田善騎手、藤田伸騎手は、騎乗数もしっかりあって4部門すべてで上位になった結果、1位になっています。やはりMVJは騎乗数でも上位にならないと獲得できないもので、そのネーミングはともかくとして騎乗数あっての「Valuable」なのだろうと想像されます。

一方で4部門すべて1位で満点というのは87年の岡部騎手、97年、99年の武豊騎手。20年以上満点獲得者が出ておらず、かなりハードルが高くなっています。かつてはリーディング上位騎手が自然と騎乗数も多くなる傾向がありましたが、近年は騎乗数上位騎手が勝利度数、勝率、獲得賞金と明らかに違うので、満点が出づらくなっています。満点に向けては騎乗数で1位を獲れるかが鍵で、そうした意味でMVJ完全制覇に最も近い位置にいる(騎乗数最多の可能性があり、なおかつリーディングを獲れそう)のは戸崎騎手であろうと思われます。もっとも現在の勝率部門は川田騎手が盤石なので、結局完全制覇は難しいのかもしれませんが。

以上、各年の数字を見てきた中では

・MVJは騎乗数も評価するところに意義がある
・その結果、騎手大賞級の成績を収めてもMVJを受賞できないことがある。それは22年に限ったことではない

ということが見えてきました。MVJをJRA賞の部門として大々的に表彰することの是非、ポイントの与え方に議論の余地はありましょうが、この制度は集計が簡単な割に、現時点でもなかなかいい感じに機能しているのではないかと思います。

*1:川田騎手がMVJになるにはあとおよそ120鞍の騎乗が必要でした。1日あたりに均すと1鞍以上2鞍以下ですが、積み重ねると大きな数字に…

*2:【書く書くしかじか】再考を期待したいJRA賞「MVJ」の選出方法 https://www.sponichi.co.jp/gamble/news/2023/02/08/kiji/20230208b00004048003000c.html