22年のホープフルSを単勝90.6倍の人気薄で優勝し、GI馬となったドゥラエレーデ号。現在4歳ですが、未勝利戦脱出はダートであるようにダートも芝も走れること、ホープフルS優勝により賞金を積んでしまったことから、異例のローテーションで走っているのは周知の通りです。先週はエルムSで2着になりましたが、次走は札幌記念と報じられ話題に。また、鞍上予定がテン乗りとなる藤岡佑騎手で、騎乗騎手の多さ、乗り替わりの多さも取り沙汰されます。
このため、「こんなに乗り替わりの多いGI馬もいないのでは」「こんなに騎乗騎手が多いGI馬もいないのでは」という話になりがちですが、ホープフルS優勝後の戦歴を見る限りは、ムルザバエフ騎手が乗れそうな時は極力同騎手を乗せようとしていることも感じられ、果たして言われるほど乗り替わりや騎乗騎手が多いのだろうか、との感想を持っています。印象が先走っていないか、悪い言い方をするとネットのおもちゃになっていないか?ということですね。
そこで、過去のGI馬について、乗り替わりの回数、騎乗騎手の人数を一通り確認し、ドゥラエレーデ号が過去に類を見ないほど乗り替わり・騎乗騎手が多いGI馬なのかを見てみました。対象は86年以降デビューで中央平地GIを優勝した中央所属馬472頭。ただ、「GI馬として」という観点で確認する以上、テンハッピーローズ号やブローザホーン号のように、条件戦時代にいろいろと試行錯誤があった馬と2歳GIを優勝したドゥラエレーデ号を横並びに論じていいかどうかは大いに疑問があるため、原則「中央GI初優勝後」のみの戦績を対象に見ています。すなわち、ドゥラエレーデ号についてもホープフルS優勝を起点に、その後の戦績のみで比較します。マル地馬および中央登録抹消後に地方に移籍した馬は、中央在籍時の戦績だけ見ています。
[ 乗り替わり回数の定義 ]
一つの基準となるドゥラエレーデ号を例にします。同馬はホープフルS優勝後、UAEダービー、東京優駿、宝塚記念、セントライト記念、チャンピオンズC、東京大賞典、フェブラリーS、ドバイWC、エルムSと歴戦。UAEダービーはホープフルSのムルザバエフ騎手からC.デムーロ騎手に替わっているのでここで1回、以下東京優駿の坂井騎手で2回、宝塚記念の幸騎手で3回、セントライト記念の坂井騎手で4回、チャンピオンズCのムルザバエフ騎手で5回、ここから4戦ムルザバエフ騎手で、エルムSの武騎手で6回。ドゥラエレーデ号の乗り替わり回数は6回とします。次走予定の札幌記念で7回目の予定ですが、出走が確定していないため考慮しません。
[ 騎乗騎手人数の定義 ]
同様にドゥラエレーデ号を例にします。UAEダービー以降同馬に騎乗した騎手は、順にC.デムーロ騎手、坂井騎手、幸騎手、ムルザバエフ騎手、武騎手。騎乗騎手は5人とします。次走予定の札幌記念の扱いは乗り替わり回数と同様です。
この考え方に則って中央GI初優勝後の各馬の乗り替わり回数や騎乗騎手人数を降順で並べました。472頭すべて載せるのは量が多いため上位馬のみです。複数いる場合は中央GI初優勝直近順で並べています。「~など○頭」としている際の代表馬は、グループ内で中央GI初優勝が直近である馬としました。いずれもその多くを目視で算出しているため、多少の間違いがある可能性があります。ご了承ください。
<中央GI初優勝後の乗り替わり回数>
回数 | 馬名 |
---|---|
33回 | |
29回 | |
21回 | |
19回 | |
16回 | |
15回 | |
14回 | |
13回 | |
12回 | |
11回 | |
10回 | |
9回 | |
8回 | |
7回 | |
6回 |
人数 | 馬名 |
---|---|
18人 | |
14人 | |
13人 | |
12人 | |
11人 | |
10人 | |
9人 | |
8人 | |
7人 | |
6人 | |
5人 |
ドゥラエレーデ号は確かに乗り替わり回数、騎乗人数とも少なくないのかもしれませんが、他のGI馬に比べたらまだまだ。さらに同年齢・同馬主のドルチェモア号がその上を行っています。ドゥラエレーデ号がある程度走っているから、ローテが異色だから注目される側面はあるでしょうが、ドルチェモア号の乗り替わりや騎手の人数についての話題は観測範囲内ではほぼ見ることがありません。近年ではジェラルディーナ号もエリザベス女王杯優勝後に鞍上がコロコロ替わっていますが、そのことにはほぼ触れられていなかったと記憶しています。ドゥラエレーデ号ばかり取り沙汰されるのには釈然としない思いがあります。
とはいえ最上位のノボトゥルー号はキャリアが長いからこその数字。4歳のドゥラエレーデ号と比較してもキャリアが違いすぎるのが実情です。そこで、2歳GI(阪神JF、朝日杯FS、ホープフルS。前身競走含む)の優勝馬に限り、さらにドゥラエレーデ号が現在4歳であることを勘案して、4歳暮れまでの乗り替わり回数、騎乗人数を確認してみました。
このカウントにはGI優勝前の分も入っています。
<2歳GI優勝馬・4歳までの乗り替わり回数(優勝前含む)>
人数 | 馬名 |
---|---|
14回 | |
12回 | |
11回 | |
10回 | |
9回 | |
8回 | |
7回 |
人数 | 馬名 |
---|---|
10人 | |
9人 | |
8人 | |
7人 | |
6人 | |
5人 |
この括りだとドゥラエレーデ号も上位に来て、特に騎乗人数は札幌記念でトップタイになりそう。とはいえ過去にいなかったほどの人数かというとそうでもなく、乗り替わり回数はまだまだエイシンチャンプ号に及びません。やはり群を抜いた数字とは言えないと思われます。
ということで、「ドゥラエレーデ号の乗り替わり回数・騎乗人数は多いと言えるのか」という問いに対して、現時点の答えとしては「2歳GI馬の4歳シーズンの数字としては多い方だが、断トツとは言えない。ローテ面はともかく、乗り替わりや騎手の人数に関しては類を見ないほどではない」と結論付けるしかないのではと思われます。むしろ、無茶なローテーションの割に抑えられているのではとすら感じます。このあたりは個人の印象でしかなく、読み手によって違う印象を持つでしょうが、主観を除いた客観的な数字としては上掲のとおりなので、あとはこれをもって個々に解釈してくださればと思います。