中央競馬のためにならない話

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出走全馬継続騎乗のレース

月次の話もできず、3年目騎手の将来も展望できず、新年度になってしまいました。昨年以上に更新頻度が少なくなっていますが、時間ができたら通常記事を書きたいところです。通常記事は約半年ぶり…。おおお…。


さて、先週末の産経大阪杯は少頭数ながら豪華なメンバーが揃い話題になりましたが、全馬乗り替わりがない、継続騎乗のレースだったんですよね。こうした例はあまりない気がするので、調べてみました。
データは1986年以降のサラ系、アラ系、平地、障碍すべてのレースを対象にとっており、全馬乗り替わりになっていないレースをピックアップしました。未勝利戦などは、初出走の馬がいることがたまにありますが、そうした例は排除し、純粋に出走全馬が前走と今回とで、騎乗する騎手が一緒、というレースのみを挙げています。1986年初頭の、「前走があるけれど騎乗騎手が不明」という馬が出走しているレースは除きました。
以上で集計した結果、28年ちょっとで409件、ということになりました。思ったよりは多かった印象。すべてを羅列してもしょうがないので、年別等、いくつかの項目をキーに数字を挙げてみます。なお、以下に示す馬齢表記はすべて現表記で統一しています。


<年別>

レース数総レース数比率
19865529071.89%
19874029121.37%
19884329231.47%
19894229291.43%
19904429841.47%
19913830031.27%
19923130091.03%
19932630280.86%
19942430410.79%
19951530350.49%
19961030390.33%
1997830420.26%
1998430490.13%
1999430190.13%
2000530520.16%
2001530400.16%
2002030380.00%
2003131430.03%
2004132020.03%
2005331960.09%
2006132030.03%
2007131950.03%
2008231890.06%
2009131870.03%
2010031890.00%
2011231860.06%
2012131630.03%
2013131690.03%
201418500.12%

90年代半ばまでは毎年かなりのレースで全馬乗り替わりなし、という例が見られるのですが、そこから激減、年間で乗り替わりのないレースがゼロ、という年すら出てきます。21世紀に入ってからは20件、少ないですね。1995年前後がひとつの潮目になっていそうですが、この時期は外国人騎手の短期免許制度が整備された(1994年)とともに、笠松安藤勝己騎手がライデンリーダー号とともに中央競馬で活躍(1995年)してます。また、岡部幸雄騎手が先鞭をつけた中央騎手のフリー化もこの頃までにはだいぶ進んでおり、そうした事情が重なって乗り替わりが頻繁に行われるようになったのかと推測します。

2001年以降の20例を以下に示します。

日付場所番号レース名頭数
20010630函館10R下北半島特別12頭
20010721函館1R2歳未勝利6頭
20010805小倉9R若戸特別10頭
20010825小倉9R立山特別10頭
20010923中山11Rオールカマー7頭
20030802函館6R3歳以上500万下11頭
20040731小倉1R2歳未勝利7頭
20050717函館1R2歳未勝利7頭
20050731新潟2R2歳未勝利8頭
20050910中山4R障害未勝利7頭
20060415中山11R中山グランドジャンプ15頭
20071110京都9R京都ハイジャンプ7頭
20080713福島1R2歳未勝利8頭
20080904札幌9RUHB8頭
20091128京都9R京都2歳S5頭
20110716函館1R2歳未勝利7頭
20111119京都3R2歳未勝利11頭
20120630函館1R2歳未勝利6頭
20130706函館3R3歳未勝利10頭
20140406阪神11R産経大阪杯8頭

今回のケースは9ヶ月ぶり。最近は年に一度くらいのペースでしか発生していませんね。この中に中山グランドジャンプがあります。15頭立て、メインレースで乗り替わりなしとはなかなか強烈。カラジ号が2度目の優勝を果たした年ですが、この年は参戦した外国馬3頭がいずれもステップレースを使ってきたのも大きかったです。


<開催場別>

場所レース数総レース数比率
札幌4545620.99%
函館7145181.57%
福島1372260.18%
新潟3774280.50%
中山66123760.53%
東京48116470.41%
中京1277090.16%
京都38125490.30%
阪神27113670.24%
小倉5275400.69%

主場よりはローカル場、特に北海道や小倉が多いです。北海道や小倉は滞在馬、滞在騎手が多く、騎手が調教をつけてそのままレースへ、ということも多いでしょうから、そうした関係で継続騎乗のレースが多くなっていそうです。また、これらの競馬場は少頭数にもなりやすいですよね。単純に考えると少頭数の方が全馬継続騎乗になりやすいので、それもありそうです。
福島や中京が極端に少ないのがいまいちわかりません。この二場の場合は、かつてアラブの未勝利戦がよく組まれていて、多くの馬(場合によっては全馬)が初出走、というレースが多かったので、そうしたレースも乗り替わりなしとして組み込めば、数はそれなりに増えます。今回は阪神での事例となりますが阪神では今世紀初、実に16年9ヶ月ぶりの全馬乗り替わりなしのレースでした。
各場での最新の全馬乗り替わりなしのレースを以下に示します。

場所日付番号レース名頭数
札幌200809049RUHB8頭
函館201307063R3歳未勝利10頭
福島200807131R2歳未勝利8頭
新潟200507312R2歳未勝利8頭
中山2006041511R中山グランドジャンプ15頭
東京199601152R3歳未勝利10頭
中京199506255R障害OP9頭
京都201111193R2歳未勝利11頭
阪神2014040611R産経大阪杯8頭
小倉200407311R2歳未勝利7頭

阪神は今回更新されましたが、東京、中京ではいまだ今世紀全馬乗り替わりなしというレースは出ていません。中京は来年には丸20年出ていないことに。


<レース番号別>

番号レース数総レース数比率
1R7275310.96%
2R3772360.51%
3R2264510.34%
4R1959690.32%
5R4960090.82%
6R2362940.37%
7R3577670.45%
8R2781080.33%
9R6081180.74%
10R3680780.45%
11R2279380.28%
12R774230.09%

午前中、特に1Rが多いです。別項で述べますが、何だかんだで継続騎乗が多く発生するのは未勝利戦になるので、1Rが多くなるのは自然と思われます。3〜6Rが少なめになるのは、新馬戦が組まれていたり、障害未勝利戦(初障碍の馬は乗り替わりが多いので)が組まれていたりする事情によるものでしょう。総レース数*1からもそれが読み取れます。9Rが意外と多いのは、9Rに組まれる特別競走が少頭数になりやすい事情がありそうです。メインレースに相当する11Rよりも12Rの方が少ないのは意外です。少頭数になりにくいからでしょうか?


<頭数別>

頭数レース数総レース数比率
5頭222608.46%
6頭577237.88%
7頭6414944.28%
8頭9538692.46%
9頭5651961.08%
10頭4963130.78%
11頭2767500.40%
12頭22100630.22%
13頭1078950.13%
14頭396760.03%
15頭369000.04%
16頭1221180.005%

何度か述べているように、少頭数の方が数としては多いですね。5頭立て、6頭立てとなるとレースの絶対数が少なくなるので、継続騎乗のレース数も少ないですが、全レース数に対する比率で見ると高いです。14頭立て以上のレースで全馬乗り替わりなしというのはもうないようなものですね…。
13頭立て以上の乗り替わりのなかった例を以下に示します。

日付場所番号レース名頭数
19860510新潟5R3歳未勝利13頭
19860816小倉9R指宿特別13頭
19861018京都8R3歳以上400万下13頭
19861207中山7R3歳以上400万下13頭
19870214小倉4R3歳以上400万下13頭
19880319東京9R狛江特別15頭
19910224中山2R3歳未勝利16頭
19910414中山6R3歳500万下13頭
19910707福島4R3歳未勝利13頭
19920126中山8R4歳以上500万下13頭
19920222東京7R4歳以上500万下14頭
19920718札幌9R知床特別13頭
19940115中山1Rアラ400万下14頭
19940123中山2R3歳未勝利15頭
19950122中山2R3歳未勝利14頭
19970706阪神2R3歳未勝利13頭
20060415中山11R中山グランドジャンプ15頭

なお、17頭立て以上では全馬乗り替わりなしというレースはありませんでした。初出走馬も含めた例では、2007年7月28日の小倉1Rの2歳未勝利戦が、九州産馬限定戦という特殊な事情もあり、17頭立て、1頭初出走、16頭が継続騎乗というものがあります。18頭立て以上では初出走を含めてもこのような例はありません。


<クラス別>

クラスレース数総レース数比率
2歳未勝利4354220.79%
2歳500万下38890.34%
2歳OP128341.44%
3歳未勝利87242380.36%
3歳500万下3248750.66%
3歳1000万下21531.31%
3歳OP815000.53%
500万下91242230.38%
1000万下36123740.29%
1600万下835720.22%
OP937410.24%
アラ未勝利95971.51%
アラ1勝以上187402.43%
障害未勝利1125290.43%
障害1勝以上4013642.93%

数としては未勝利戦や500万下条件が多いですが、レース総数が多いので自然とそうなるという感じ。比率的にはアラブの競走や障碍競走が大きくなっていますね。前者は騎手の乗り替わりが頻繁になる頃には廃止されていたこと、後者はそもそも騎乗する騎手が少ないことが影響しているのでしょう。
平地のサラ系オープン競走で乗り替わりがなかった例を以下に示します。

日付場所番号レース名頭数
19860824函館9R青函S7頭
19860907函館7Rすずらん7頭
19861025東京8RいちょうS7頭
19870125京都11R日経新春杯7頭
19870215京都11Rきさらぎ賞8頭
19870321阪神9Rすみれ賞10頭
19870530阪神10RマーガレットS8頭
19870816小倉8Rフェニックス賞6頭
19871122福島9R福島3歳S10頭
19880110中山11R京成杯8頭
19880214東京11R共同通信杯12頭
19881218中山11R朝日杯3歳S9頭
19890121京都9R若駒S6頭
19890211東京11RバレンタインS9頭
19900901小倉9Rひまわり賞8頭
19900922中京9R野路菊S6頭
19910714小倉11R小倉日経OP8頭
19910831小倉9Rひまわり賞10頭
19920125中山9RジュニアC6頭
19920418中山11RクリスタルC11頭
19931205中山11RディセンバーS6頭
19940716札幌5R2歳OP5頭
19950212京都11R京都記念8頭
19950520中京11RエメラルドS9頭
19950819小倉8Rフェニックス賞6頭
19950903函館10Rコスモス賞9頭
20010923中山11Rオールカマー7頭
20091128京都9R京都2歳S5頭
20140406阪神11R産経大阪杯8頭

朝日杯3歳S(現:朝日杯FS)があります。平地GIとしては唯一のケース、9頭立てという少頭数も大きかったようです。この頃の朝日杯3歳Sは10頭前後での施行も多かったようですが、いまの平地GIは一部を除いてフルゲート割れも珍しい状況、時代背景も考えると全馬乗り替わりなし、ということはもうなさそうですね。今回の例は平地のオープンクラスでは約4年半ぶり、重賞では約12年半ぶり。久々ですね。いろいろ見ていってもけっこうなレアケースであったことがよくわかります。



まとめた感想を何か書きたいところですが、どうもうまいこと書けない、ややもすると陳腐な感想しか出て来なさそうなので、投げっぱなしで終わります。

*1:乗り替わり云々以前の問題である新馬戦・未出走戦を除外した数字