中央競馬のためにならない話

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チーム昆の力

栗東の昆厩舎は開業後しばらく地味な成績を続けていましたが、高松宮記念優勝のローレルゲレイロ号、そして本日故障が発表されてしまいましたが東京優駿優勝のディープスカイ号を擁して、近年目覚ましい戦績を挙げています。

  集計期間:2000. 3. 5 〜 2009. 8.16
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年・年月    着別度数                     勝率  連対率 複勝率  賞金合計
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2000年       5- 17-  2-  7-  7- 54/ 92    5.4%  23.9%  26.1%   11249万
2001年      14- 15- 15- 16- 14- 98/172    8.1%  16.9%  25.6%   22748万
2002年      14- 19- 20- 11- 15-120/199    7.0%  16.6%  26.6%   28533万
2003年      12- 10-  4- 21- 13-143/203    5.9%  10.8%  12.8%   17309万
2004年      15- 12- 15- 15- 17-152/226    6.6%  11.9%  18.6%   19715万
2005年      18- 16- 18- 18- 16-158/244    7.4%  13.9%  21.3%   27975万
2006年      23- 32- 25- 23-  9-119/231   10.0%  23.8%  34.6%   43324万
2007年      22- 29- 16- 13- 15-113/208   10.6%  24.5%  32.2%   43408万
2008年      20- 16- 20- 15- 22-126/219    9.1%  16.4%  25.6%   85304万
2009年      14- 20- 10- 11-  7- 94/156    9.0%  21.8%  28.2%   38620万
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この厩舎の騎手起用は非常に偏っていて、主戦としてまず浮かぶのが本田騎手(現調教師)。本田騎手の引退後の主戦は藤田騎手で、松田騎手や四位騎手もよく騎乗しています。騎乗の多いトップジョッキーは藤田騎手と四位騎手くらいでして、この偏りを受けてかそうでないのか、藤田騎手は昆厩舎の所属馬の調教をつける騎手たちを総称して「チーム昆」と自身のブログで紹介していました。(追記:過去記事を検索したら藤田騎手のブログから「チーム昆」の記載を見つけることはできませんでした。思い込みでした。お詫びいたします。)「チーム昆」とでも呼びたいところです。このチーム、騎手の成績を伸ばす力になっているように思うのです。


最近、チーム昆に加入したと見られる騎手が柴原騎手です。デビュー時は田中章厩舎に所属していましたが、自厩舎での活躍よりもグローリアスデイズ号、カンパニー号など、音無厩舎での活躍が印象深い騎手。しかし、菊花賞における失策でカンパニー号を降ろされ、2008年以降は音無厩舎とは実質切れた状態。それに伴い自身の騎乗数も激減、2007年11月に98勝目を挙げたのに通算100勝を達成したのが今年の3月と、長い間勝利も挙げられず、苦しい日々が続きました。そこへ来てチーム昆への参加。これがもたらした劇的な変化は以下のとおりです。

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集計期間                  着別度数                     勝率  連対率 複勝率 昆厩舎騎乗
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2008. 1. 5 〜 2009. 3.28   2-  7-  4-  3-  7-100/123    1.6%   7.3%  10.6%          0
2009. 4.11 〜 2009. 8.16   4-  9-  4-  2-  2- 30/ 51    7.8%  25.5%  33.3%         34
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※2004年〜2006年に計5鞍昆厩舎の所属馬に騎乗していますが、スポット的騎乗であり、チーム加入は騎乗が急増した2009年4月以降と判断しました。
いずれの率も3倍以上に跳ね上がる上昇ぶり。しかも、チーム加入後最初の騎乗週には1番人気を背負った快速メリュジーヌ号に騎乗しています。昆厩舎の管理馬の騎乗数が全然違うように、実質昆厩舎の成績に左右されてるだけじゃ?と思わないでもないですが、実はチーム加入後の、元所属の田中章厩舎での成績は昆厩舎以上なんですよね。昆厩舎以外の騎乗にもいいリズムをもたらしているとも言えるのではないでしょうか。実際のところ、4月以降、昆厩舎と田中章厩舎以外にはわずか3鞍しか乗っていないというのが泣けてきますが、それでも不遇期に比べると本人としては今の方がずっといいですよね。
ごく最近では、上村騎手がチームに加入したみたいですね。15日の新潟の新馬戦を勝利したスプリングサンダー号は入厩当初から上村騎手が調教をつけ、仕上げまで徹頭徹尾任されていたとか*1。上村騎手、橋口厩舎に続いて太いパイプをゲットでしょうか。今後このコンビでの遠征があるとちょっと注意かもしれません。上村騎手と昆厩舎といえば、6月のウイニングショット号での勝利が鮮烈で、ちょうどそのあたりが加入時期のようですが、柴原騎手の例でもうかがえるように、チームに加入するといきなり勝ち負けになる馬に乗せてもらえるんですかねえ? 普段乗らない騎手が週に何鞍か乗ることになったら注意してみようと思います。
参考まで、現役JRA騎手のチーム昆の出入りの状況を整理しました。チーム加入は、連続して騎乗があるか否かにより判断しています。上村騎手はまだまだ騎乗数が少ないですが、たぶんチームに加入したと思われます。

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騎手        推定加入期間         管理馬騎乗成績
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荻野  要    2002. 6 〜 2003. 5.   1-  1-  1-  1-  0- 32/ 36
武幸四郎    2002. 7 〜 2002. 9.   2-  5-  5-  2-  3- 31/ 48
藤田伸二    2002. 8 〜           35- 26- 15- 17- 13- 86/192
小林慎一郎  2003. 6 〜 2004. 8.   1-  1-  2-  7-  4- 65/ 80
野元昭嘉    2005. 3 〜 2008. 8.   5-  8-  8-  9- 11- 90/131
松田大作    2007. 1 〜            9- 15- 15- 12- 17-112/180
四位洋文    2008. 2 〜           14- 17-  9-  8-  5- 41/ 94
柴原央明    2009. 4 〜            2-  7-  3-  1-  0- 26/ 39
上村洋行    2009. 6 〜            2-  0-  0-  0-  0- 10/ 12
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※四位騎手はチーム昆として調教をつけているというより、ディープスカイ号で結果を出したことで多く騎乗するようになった感じですが、 便宜上チームに入れておきます。

荻野要騎手→小林慎騎手というあからさまなスイッチぶりが面白いです。そして二人ともまったく結果を出せていない…。チーム昆の力は単なる妄想なのでしょうか。いやいやきっと開業当時でノウハウが確立されてなかったとか、有力馬は本田騎手が乗ってたとか、そうした事情があるんですよきっと。そういうことにしておきます。
あと、整理していて気付いたのですが、最近野元騎手が乗ってないんですよね。「松田と野元を積極的に乗せるなんて、すごく豪気な人だ」と思ったのがこの厩舎を知るきっかけだっただけに、彼が乗らないのは少し寂しいような。乗ったところで信頼なんてとてもできませんけどね。