中央競馬のためにならない話

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新人騎手の北海道開催騎乗成績

新人騎手がデビューしておよそ5ヶ月。今年の新人騎手は見事なスタートダッシュを見せた 斎藤騎手を筆頭に、なかなか粒揃いの印象。夏競馬が始まって、東西主場で騎乗している新人騎手は岩田望騎手以外やや苦しんでいるように映りますが、目下元気なのが北海道シリーズ参戦組です。
特に6勝を挙げた団野騎手、4勝ながら3着が9回の菅原明騎手には馬券的にお世話になった競馬ファンも多そう。団野騎手は藤沢和厩舎からの依頼も受けるようになり、北海道続戦なら続く札幌開催でますますの飛躍を予感させます。ちなみに、先週団野騎手がレッドサイオン号で挙げた勝利は、藤沢和厩舎の30年以上、通算1,500勝にも届こうかというキャリアの中で、厩舎初の「関西の3kg減騎手による平場優勝」。また、団野騎手の藤沢和厩舎の管理馬への騎乗数(3鞍)は、既に関西の3kg減騎手の平場最多騎乗数(これまで2鞍が最高)となっています。

さて、函館開催を終えての団野騎手の成績は60鞍騎乗で6勝、勝率はちょうど10%。これは新人騎手の北海道開催の成績としてはけっこういいのでは?と思ったので、一通り調べてみました。
調べた対象は、86年以降デビューの競馬学校卒業騎手のうち、デビュー年に北海道開催で騎乗した全騎手。2年目の年に初めて北海道に来た、というような例は除き、あくまでデビューした年に騎乗した例のみです。この成績を函館、札幌、北海道合計で見て、参考に勝率も併記しました。北海道シリーズは97年に開催順が札幌→函館から函館→札幌になっているので、整理表は96年以前と97年以降の2つとしています。本来は他にどんな騎手が騎乗していたか、例えば去年の札幌はモレイラ騎手が騎乗していたから仕方ない、というような他者を要因とした成績への影響もあるでしょうが、考えたらキリがないのでここでは無視して、純粋に個々の成績がどうだったかで見ています。

騎手札幌函館合計
成績勝率成績勝率成績勝率
1986松永幹夫(10.7.8.59)11.9%(8.13.10.44)10.7%(18.20.18.103)11.3%
横山典弘(4.2.3.24)12.1%(2.4.5.23)5.9%(6.6.8.47)9.0%
森勝義騎乗なし(0.0.0.5)0.0%(0.0.0.5)0.0%
1987塩村克己騎乗なし(7.4.2.25)18.4%(7.4.2.25)18.4%
長峰一弘騎乗なし(0.3.4.11)0.0%(0.3.4.11)0.0%
合谷喜壮(0.0.1.43)0.0%騎乗なし(0.0.1.43)0.0%
1988岡潤一郎(6.14.15.50)7.1%(4.3.4.22)12.1%(10.17.19.72)8.5%
菊沢隆徳(3.3.6.36)6.3%(4.7.12.31)7.4%(7.10.18.67)6.9%
千田輝彦(3.2.2.38)6.7%(3.1.3.27)8.8%(6.3.5.65)7.6%
内田浩一騎乗なし(3.3.3.29)7.9%(3.3.3.29)7.9%
横田雅博(0.0.0.12)0.0%(2.1.1.22)7.7%(2.1.1.34)5.3%
1989角田晃一開催なし(12.7.8.44)16.9%(12.7.8.44)16.9%
佐藤哲三(4.5.13.45)6.0%(4.5.13.45)6.0%
山田泰誠(4.5.9.32)8.0%(4.5.9.32)8.0%
高橋明(0.2.0.5)0.0%(0.2.0.5)0.0%
小野次郎(0.0.1.6)0.0%(0.0.1.6)0.0%
1990小原義之(5.5.4.64)6.4%(0.2.1.8)0.0%(5.7.5.72)5.6%
北沢伸也(3.1.2.14)15.0%(1.6.3.27)2.7%(4.7.5.41)7.0%
久保田英敬(4.1.1.28)11.8%(0.0.2.9)0.0%(4.1.3.37)8.9%
玉ノ井健志(0.2.3.29)0.0%(1.3.5.31)2.5%(1.5.8.60)1.4%
1991橋本広喜騎乗なし(8.10.7.28)15.1%(8.10.7.28)15.1%
藤田伸二騎乗なし(4.0.2.35)9.8%(4.0.2.35)9.8%
徳吉孝士(2.4.4.40)4.0%(1.1.3.15)5.0%(3.5.7.55)4.3%
四位洋文(0.4.3.29)0.0%(1.2.0.3)16.7%(1.6.3.32)2.4%
河北通騎乗なし(1.2.2.13)5.6%(1.2.2.13)5.6%
1992横山義行(4.5.8.50)6.0%(7.9.4.43)11.1%(11.14.12.93)8.5%
吉永護(1.3.1.35)2.5%(1.1.2.9)7.7%(2.4.3.44)3.8%
後藤浩輝騎乗なし(2.0.3.15)10.0%(2.0.3.15)10.0%
1993亀山泰延騎乗なし(5.7.3.25)12.5%(5.7.3.25)12.5%
飯田祐史騎乗なし(4.3.7.41)7.3%(4.3.7.41)7.3%
川合達彦騎乗なし(4.3.0.17)16.7%(4.3.0.17)16.7%
藤井正輝(1.0.1.34)2.8%(3.0.4.23)10.0%(4.0.5.57)6.1%
小林徹弥(2.4.3.22)6.5%(0.0.2.2)0.0%(2.4.5.24)5.7%
1994菊地昇吾(5.5.4.41)9.1%(4.2.3.29)10.5%(9.7.7.70)9.7%
岩部純二(3.1.3.38)6.7%(0.2.1.28)0.0%(3.3.4.66)3.9%
吉田豊(0.3.5.62)0.0%(0.4.6.28)0.0%(0.7.11.90)0.0%
小林久晃騎乗なし(0.0.0.3)0.0%(0.0.0.3)0.0%
1995石山繁(2.1.3.27)6.1%(0.0.0.4)0.0%(2.1.3.31)5.4%
青木芳之(0.1.0.18)0.0%(1.3.3.28)2.9%(1.4.3.46)1.9%
野元昭嘉(1.0.0.3)25.0%騎乗なし(1.0.0.3)25.0%
1996田村真来騎乗なし(0.0.0.3)0.0%(0.0.0.3)0.0%

騎手函館札幌合計
成績勝率成績勝率成績勝率
1997池田鉄平(3.2.1.37)7.0%(1.0.5.52)1.7%(4.2.6.89)4.0%
武士沢友治騎乗なし(0.1.2.42)0.0%(0.1.2.42)0.0%
1998太宰啓介(11.8.5.73)11.3%騎乗なし(11.8.5.73)11.3%
荻野要(4.6.2.46)6.9%(2.4.10.58)2.7%(6.10.12.104)4.5%
1999二本柳壮(1.2.8.38)2.0%(6.3.6.63)7.7%(7.5.14.101)5.5%
高田潤騎乗なし(2.4.1.35)4.8%(2.4.1.35)4.8%
菊池憲太(0.0.3.14)0.0%騎乗なし(0.0.3.14)0.0%
2000小林慎一郎(2.2.3.38)4.4%(5.0.8.43)8.9%(7.2.11.81)6.9%
梶晃啓(1.4.2.51)1.7%(4.4.1.52)6.6%(5.8.3.103)4.2%
田嶋翔(2.1.3.41)4.3%(0.0.0.5)0.0%(2.1.3.46)3.8%
鈴来直人騎乗なし(0.1.0.13)0.0%(0.1.0.13)0.0%
2001川島信二騎乗なし(2.3.5.48)3.4%(2.3.5.48)3.4%
大沢辰也(0.0.0.17)0.0%騎乗なし(0.0.0.17)0.0%
2002南井大志(3.1.1.19)12.5%騎乗なし(3.1.1.19)12.5%
2003長谷川浩大(7.7.8.57)8.9%(3.0.1.18)13.6%(10.7.9.75)9.9%
石橋脩(1.2.5.53)1.6%(7.4.1.57)10.1%(8.6.6.110)6.2%
北村浩平(4.5.4.74)4.6%(3.10.4.57)4.1%(7.15.8.131)4.3%
高井彰大騎乗なし(2.4.7.32)4.4%(2.4.7.32)4.4%
鈴木慶太(0.0.0.15)0.0%(0.0.2.35)0.0%(0.0.2.50)0.0%
2004藤岡佑介(6.4.6.71)6.9%(3.6.8.53)4.3%(9.10.14.124)5.7%
津村明秀(2.1.2.28)6.1%(0.2.1.46)0.0%(2.3.3.74)2.4%
丹内祐次騎乗なし(2.1.0.6)22.2%(2.1.0.6)22.2%
高野和(1.1.4.22)3.6%(0.1.0.21)0.0%(1.2.4.43)2.0%
2005大野拓弥(4.2.3.28)10.8%(1.3.4.58)1.5%(5.5.7.86)4.9%
塚田祥雄(1.2.2.22)3.1%(3.3.1.13)15.0%(4.5.3.35)8.5%
小島太一(1.4.4.23)3.1%(2.2.1.23)7.1%(3.6.5.46)5.0%
2006的場勇人(1.1.1.34)2.7%(4.2.4.72)4.9%(5.3.5.106)4.2%
北村友一(2.5.2.38)4.3%騎乗なし(2.5.2.38)4.3%
黛弘人(1.0.1.50)1.9%(0.0.3.45)0.0%(1.0.4.95)1.0%
千葉直人騎乗なし(0.0.3.23)0.0%(0.0.3.23)0.0%
2007草野太郎騎乗なし(2.1.0.18)9.5%(2.1.0.18)9.5%
丸田恭介(1.0.0.27)3.6%(0.3.1.27)0.0%(1.3.1.54)1.7%
池崎祐介(0.0.0.2)0.0%(0.0.0.7)0.0%(0.0.0.9)0.0%
2008三浦皇成(18.21.10.114)11.0%(23.11.19.84)16.8%(41.32.29.198)13.7%
大江原圭(0.0.0.30)0.0%(0.0.1.11)0.0%(0.0.1.41)0.0%
2009丸山元気開催なし(3.4.6.80)3.2%(3.4.6.80)3.2%
小野寺祐太騎乗なし(1.0.3.57)1.6%(1.0.3.57)1.6%
国分優作騎乗なし(0.1.3.56)0.0%(0.1.3.56)0.0%
2010西村太一(3.2.1.62)4.4%(1.2.3.44)2.0%(4.4.4.106)3.4%
川須栄彦騎乗なし(4.1.3.35)9.3%(4.1.3.35)9.3%
2011杉原誠人(1.1.0.17)5.3%騎乗なし(1.1.0.17)5.3%
横山和生騎乗なし(1.0.1.25)3.7%(1.0.1.25)3.7%
2012菱田裕二(2.4.1.37)4.5%(4.2.6.50)6.5%(6.6.7.87)5.7%
長岡禎仁(0.1.0.2)0.0%(0.0.0.4)0.0%(0.1.0.6)0.0%
2013伴啓太(4.3.6.72)4.7%開催なし(4.3.6.72)4.7%
城戸義政(2.7.1.66)2.6%(2.7.1.66)2.6%
2014小崎綾也(7.1.5.64)9.1%(8.9.9.69)8.4%(15.10.14.133)8.7%
井上敏樹(1.1.4.54)1.7%(2.2.3.59)3.0%(3.3.7.113)2.4%
2016坂井瑠星(6.5.4.64)7.6%(4.5.7.72)4.5%(10.10.11.136)6.0%
菊沢一樹(0.0.0.20)0.0%騎乗なし(0.0.0.20)0.0%
2017横山武史(4.4.5.44)7.0%(3.6.5.65)3.8%(7.10.10.109)5.1%
2018西村淳也(1.7.7.37)1.9%騎乗なし(1.7.7.37)1.9%
2019団野大成(6.3.2.49)10.0%未騎乗(6.3.2.49)10.0%
菅原明良(4.2.9.58)5.5%(4.2.9.58)5.5%
亀田温心(2.1.2.40)4.4%(2.1.2.40)4.4%
斎藤新(0.0.0.6)0.0%(0.0.0.6)0.0%
大塚海渡(0.0.0.1)0.0%(0.0.0.1)0.0%

ぱっと見で読み取れると思いますが、デビュー年に北海道で騎乗して勝率10%に達する例は稀。新人騎手の北海道勝率10%は、見るからにエグい*1成績を残した三浦騎手以来11年ぶりのことです。ある程度騎乗した上で北海道勝率10%以上を記録した新人騎手の多くが、その後GIや重賞で活躍しているだけに、北海道開催スタートまで2勝と苦しんだ団野騎手もきっかけを掴んでいるなら先々明るいかもしれません。
開催の勝利数としても、北海道前半の開催で6勝した例はあまりなく、これだけ勝てれば上々という印象。近年函館で6勝以上した騎手だと坂井騎手、小崎騎手、三浦騎手、藤岡佑騎手、長谷川騎手ですか。その後の成績にやや幅はあるものの、彼らくらいの活躍は見込めそうです。
ほか滞在している菅原明騎手、亀田騎手は過去と比較しても水準程度でしょうか。菅原明騎手は札幌続戦とした場合、函館で勝ち切れなかった馬への継続騎乗がかなえば、成績が上がりそう。亀田騎手は現状人気馬での上位進出がほとんどで穴馬を持ってこられていないので、水準程度とはいえ少し気になるところです。

このように並べてみると、新人騎手のその後の活躍は夏競馬の成績とある程度の相関がありそうですね。勝率10%、開催半分で5,6勝というのがひとつの基準になるのではないでしょうか。東西主場でも同様の傾向になるかは見てみないとわかりません(そして実際に確認する意欲はあまりない)が、少なくとも北海道開催ではこのようなことが言えそうです。

それにしてもこう見ると騎乗数、勝利数とも断トツの三浦騎手が本当に際立っています。いまだ中央GIの優勝がない、高額条件でいまいち目立たないなど揶揄されがちな騎手ではありますが、20代のうちに800勝近く挙げられそうなのは立派。若手が育ちにくい関東において、ここ15年くらいでの最高傑作であることは疑いようがないと思います。デビュー年に北海道開催で40勝を挙げる騎手など、この先出ないのではないでしょうかね。

*1:あまりこういう表現は使うべきではないのでしょうが、他と比較しての印象が「エグい」以外の何物でもなかったので…