中央競馬のためにならない話

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関西主場で複数勝利を収めた関東の騎手

先週の京都で北村宏騎手が3勝しました。今年中に通算800勝が達成できそうな騎手ですから、1日3勝というのは特に珍しいことではなく、今年の10月1日に1日4勝、6月5日には1日5勝も記録しています。ただ、京都で3勝、というのは、関東の騎手としてはなかなかないことなのでは、と思われます。
そもそも関東の騎手が関西主場へ遠征すること自体、関西→関東主場遠征に比べて頻度が少ないはず。西高東低の状況も手伝って、GI競走であっても関西主場で関東の騎手を見ることは少ないですよね。それに加えて普段乗り慣れない競馬場ですから、そこで3勝というのは結構難易度が高いのではないのでしょうか。ということで、86年以降に関西主場(京都、阪神)で1日3勝以上を挙げた関東の騎手をピックアップしてみました。


まず、関東の騎手の京都・阪神での総合成績を以下に示します。

◆騎手別集計
騎手:(複数)
  集計期間:1986. 2. 2 〜 2011.10.30
  ソート:着別度数順
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順位 騎手      着別度数                     勝率  連対率 複勝率 単回値 複回値
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  1  横山典弘  89-108- 90- 97- 68-498/950    9.4%  20.7%  30.2%     73     82
  2  岡部幸雄  82- 52- 57- 49- 36-233/509   16.1%  26.3%  37.5%     82     73
  3  後藤浩輝  74- 79- 77- 65- 73-473/841    8.8%  18.2%  27.3%    121     96
  4  蛯名正義  74- 75- 62- 67- 55-437/770    9.6%  19.4%  27.4%     70     75
  5  内田博幸  46- 37- 46- 46- 53-266/494    9.3%  16.8%  26.1%     58     71
  6  柴田善臣  38- 45- 47- 54- 59-348/591    6.4%  14.0%  22.0%     71     76
  7  吉田豊    28- 37- 27- 24- 38-299/453    6.2%  14.3%  20.3%     78     82
  8  松岡正海  28- 33- 27- 37- 40-275/440    6.4%  13.9%  20.0%    101     75
  9  的場均    20- 19- 24- 13- 23-126/225    8.9%  17.3%  28.0%     70     76
 10  中舘英二  19-  6- 15- 12- 18-169/239    7.9%  10.5%  16.7%     83     76
 11  北村宏司  18- 19- 15- 25- 18-216/311    5.8%  11.9%  16.7%     42     41
 12  柴田政人  14- 14- 10-  5-  7- 52/102   13.7%  27.5%  37.3%     76     85
 13  大崎昭一  14- 13- 15- 20- 21-150/233    6.0%  11.6%  18.0%     70     64
 14  橋本広喜  14-  8- 16-  8-  9- 91/146    9.6%  15.1%  26.0%     46     66
 15  田中勝春  12- 21- 20- 25- 37-225/340    3.5%   9.7%  15.6%     27     48
 16  柴山雄一  12-  9- 14- 16- 18-214/283    4.2%   7.4%  12.4%     66     45
 17  田中剛    10- 13-  9-  9- 10- 71/122    8.2%  18.9%  26.2%     85     78
 18  吉田隼人   8-  6-  9-  9- 23-109/164    4.9%   8.5%  14.0%     37     80
 19  五十嵐雄   8-  3-  6-  2-  7- 62/ 88    9.1%  12.5%  19.3%     85     69
 20  村田一誠   7-  6- 15- 12-  8-139/187    3.7%   7.0%  15.0%     96     62
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25年間の集計でこれです。勝ち星少ないですね…。横山典騎手ですら関西主場で100勝もしていないとは。25年間で、関西主場で1勝以上した関東の騎手は80人にも満たず、わずかに79人です。この79人の中に、現在通算4勝の大江原騎手、通算7勝で引退した菊池騎手も含まれるのが面白いですが、そこは措きます。岡部騎手が約20年分集計できておらず、彼はさすがに合計では100勝以上しているでしょうけど、そうすると関東の騎手の中で関西主場で100勝以上しているのは岡部騎手だけ、ということになるのかもしれません。
また、上位陣の騎手の多くが現役の騎手ですね。21位に三浦騎手が入ってくるくらいですから、関東騎手の関西主場への遠征が多くなったのはここ十数年であって、昔はいま以上に関東と関西とで独立していたことがうかがえます。集計期間の関係、ということも当然考えられ、例えば的場均騎手は約10年分集計期間外ですが、それでも実働約15年分は集計できているわけで、15年で20勝というのはいかにも少ないです。もっともこの20勝は、重賞が11勝、GIは6勝という密度の濃いものです。


ここから、1日3勝以上した記録を拾っていきます。

騎手達成日備考
横山典弘91.06.09
岡部幸雄92.04.05
岡部幸雄94.11.06
岡部幸雄95.06.04
横山典弘95.12.024勝
橋本広喜97.04.20
横山典弘97.12.144勝
蛯名正義01.02.04
蛯名正義01.04.14
後藤浩輝02.02.24
後藤浩輝02.04.28
横山典弘02.06.23
内田博幸04.12.04
柴山雄一05.12.11
後藤浩輝06.07.094勝
内田博幸09.09.27
蛯名正義09.12.13
内田博幸10.05.024勝
内田博幸10.10.10
北村宏司11.10.30

たったのこれだけでした。25年で20回。年平均1回に満たないレアケースです。柴田善騎手や田中勝騎手も達成したことのない記録のようですね。1日4勝に至っては、関東の騎手が寄ってたかってわずか4度しか達成されていないようです。


上表は少しごちゃっとしているので、騎手別の達成回数で整理してみました。

騎手達成回数
横山典弘4回(うち4勝2回)
内田博幸4回(うち4勝1回)
後藤浩輝3回(うち4勝1回)
岡部幸雄3回
蛯名正義3回
橋本広喜1回
柴山雄一1回
北村宏司1回

複数回マークしているのはいずれも関東のトップ中のトップといった騎手ばかり。橋本騎手や柴山騎手は正直ラッキーパンチという印象ですが、北村宏騎手はどちらかといえば横山典騎手らトップ騎手寄りの位置づけでしょうから、遠征時に馬が集まるようになるでしょうし、この先も達成する機会があるかもしれません。
現在、関東主場を主戦場とするトップジョッキーは多くが40代。横山典騎手、蛯名騎手、内田騎手、柴田善騎手、田中勝騎手、みな40代です。彼らに続くのが後藤騎手と吉田豊騎手ですが、彼らもそれぞれ37歳、36歳と、40代騎手とそこまで離れていません。そう考えると、現在31歳の北村宏騎手に寄せられる期待は相当大きいのではないかと想像されます。北村宏騎手、あとは松岡騎手、同期のライバル石橋脩騎手、遅れてきた大器の田辺騎手、現在ローカルに回りがちですが勝浦騎手と吉田隼騎手、もちろん若手筆頭の三浦騎手も含め、彼らが5年後10年後の関東競馬界を引っ張っていかねばならないでしょう。そんな中での北村宏騎手の京都での3勝というのは、大きなアピールになったでしょうし、自信につながるのではないでしょうか。中堅どころの騎手はなかなか上位騎手の壁を崩せていませんが、兄弟子的存在の横山典騎手はじめ、騎手人生の最終コーナーにさしかかっている騎手たちも、こうした活躍を見ると自分たちが去った後も安心だと思えるように感じます。


なお、今回記事とは逆の、「関東主場で複数勝利を収めた関西の騎手」も調べないでもないですが、100勝以上の騎手が5人、特に武豊騎手が約550勝、藤田騎手が300勝以上していまして、3勝以上で集計すると膨大になりそう、かといって4勝以上で集計するとかなり少なくなりそう、というところで悩ましく思っているところです。