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ダノンシャンティ号の未来を憂う

NHKマイルCを優勝し、週末の東京優駿でも有力馬の一頭として挙げられるダノンシャンティ号。セールで高馬ばかり買っている割にたいした成果が得られていなかった馬主ダノックスにとっては念願のGIタイトルをもたらしてくれた馬です。通算重賞勝利でも2勝目(毎日杯)と3勝目(NHKマイルC)をもたらしており、2,750万円というダノックスとしては安く買った馬がここまで走るとは、ディープインパクト号やザサンデーフサイチ号の例を挙げるに及ばず、ほんと競走馬の成績は値段に比例するわけではないということがよくわかります。セールで目立つ馬主というと他には冠名トーセンの島川隆哉氏がいますが、彼がGIの表彰台に立つ日は来るのでしょうか…。


さて、ダノンシャンティ号を管理するのは松田国英師。松田国厩舎はダイワスカーレット号をはじめとして、キングカメハメハ号、クロフネ号、タニノギムレット号など多くの活躍馬を輩出する名門厩舎として知られるとともに、ハードな調教が祟っているのか、活躍馬の多くが故障することでも知られています。となるとダノンシャンティ号も果たして故障せずにいられるものか、不安になってしまうもの。どうでしょうか。
ダノンシャンティ号の毎日杯NHKマイルC東京優駿というローテーションはマツクニローテとも呼ばれる独特のもの。言うほど松田国厩舎独自というわけでもないですが、最初に採用したのが松田国厩舎であること、また、このローテを取ったクロフネ号やキングカメハメハ号がいずれも強い印象を残しているのでそう呼ばれるのかもしれません。過去にこのローテーションをとった競走馬はほとんどいません。今までマツクニローテを取った競走馬の戦績を挙げてみます。

馬名所属毎日杯NHKマイルC東京優駿最終レース
クロフネ 松田国英1着1着5着ジャパンカップダート(3歳)
キングカメハメハ松田国英1着1着1着神戸新聞杯(3歳)
ディープスカイ 昆貢 1着1着1着宝塚記念(4歳)
アイアンルック 橋口弘次郎1着8着17着東京優駿(3歳)※現役
ダノンシャンティ松田国英1着1着

1着多すぎだろ。と、それはともかく、過去のマツクニローテ4頭を見ると、いずれも早い段階でリタイアしているのがわかります。アイアンルック号は抹消されていないので戻ってくるかもしれませんが、いまだ復帰のメドは立っていません。この4頭、いずれも屈腱炎を発症しているんですよね。屈腱炎は強い馬につきものではありますが、ここまで一様に発症しているというのは短期間で激しいレースを続ける影響でしょうか。ディープスカイ号が翌年夏までもったのが奇跡のように思えます(しかも、秋以降から引退までのGI4戦にGII2戦、ずっと馬券になり続けたのだから大したものです)。


これだけ見ると、ダノンシャンティ号も遅かれ早かれ脚部不安を発症してしまうのでは…いやいやこれではサンプルが少ない。他の側面からも見てみます。NHKマイルC東京優駿、というローテーションはわりと多く見られます。松田国厩舎においても例外ではないので、この厩舎でNHKマイルC東京優駿と進んだ馬について見てみましょう。

馬名NHKマイルC東京優駿最終レース
クロフネ 1着5着ジャパンカップダート(3歳)
タニノギムレット 3着1着東京優駿(3歳)
キングカメハメハ 1着1着神戸新聞杯(3歳)
フサイチリシャール6着8着高松宮記念(5歳)
ブラックシェル 2着3着神戸新聞杯(3歳)※現役
ダノンシャンティ 1着

おおう…。5頭中4頭までが3歳中に戦線離脱しています。唯一無事に走ったフサイチリシャール号は、唯一両レースで馬券になっていない馬。逆に言うと、3歳中に戦線離脱した4頭はいずれかのレースで馬券になっていました。となると、NHKマイルCで馬券になっているダノンシャンティ号は…? 特に今年のNHKマイルCは日本レコード決着、レースで先行した2頭が骨折あるいは屈腱炎で既に戦線離脱しているだけに、この馬についても安泰とは言い切れない状況です。
ダノンシャンティ号には来年の海外遠征の話が持ち上がっているようです。夢を語るのは大いに結構、この強さならけっこういい勝負ができるかもしれません。ただ、ローテの面から見ると、無事来年を迎えられるかどうかが当面の大きな問題。普通の厩舎であっても、この時期に来年の話は時期尚早だと思われるのに、この陣営に言われても…という気がします。夏の欧州遠征ということですから、海外遠征の話はまずは無事4歳シーズンを迎えてからでも良いのではないでしょうか。それ以前に、まずは無事秋競馬を迎えないと…。さらに言うなら、まず無事東京優駿に出走しないと…。「追い切り後に脚に軽い違和感を感じて検査した結果」なんて報道にならないよう祈ります。


また、今年は毎日杯NHKマイルC東京優駿にさらに皐月賞を挟んだ、超マツクニローテで臨む競走馬がいます。そう、リルダヴァル号。毎日杯皐月賞NHKマイルC東京優駿とすべて中2週、このローテーションは史上初*1(追記1)の過酷なもの。池江郎厩舎が定年前最後のクラシックだからなのか、クラブ側の意向なのかわかりませんが、この厩舎らしからぬローテーション(追記2)で、リルダヴァル号の将来も心配です。賞金ボーダーが下がって下手にダービーに出られることになってしまったのが良くないんですよね…。まあ、池江郎厩舎なら大丈夫なような気もしますけど。


※追記1:NHKマイルカップ経由は史上初ですが、前身のNHK杯時代も考慮するとイイデスターン号が超マツクニローテを取っています。この馬、ブックマークで触れられていたアサクサキングス号のローテをも含んでいまして、毎日杯皐月賞NHK杯東京優駿宝塚記念と使われています。NHK杯NHKマイルCとでは、間隔こそ同じであれ、距離の違いによるレースの激しさなどは異なるでしょうから、同列に扱えないと思いますが(このため、マツクニローテの検討でもNHK杯時代を除いています)。毎日杯に至るまでも新馬→中1週で折り返し新馬→中1週でエリカ賞→中1週でシクラメンS→中3週で若駒S→中2週できさらぎ賞→中3週ですみれS→中1週で毎日杯、と相当な使われ方でし(シクラメンSと若駒Sはいずれもトウカイテイオー号の2着)。
※追記2:池江郎厩舎のローテーションは大した確認もせずゆったりしているイメージで書いてしまいましたが、ブックマークを拝見すると、むしろイケイケローテのことが多いようですね…。厩舎全体の出走数で見ると、例えば条件馬やオープン馬の3歳時と4歳時の出走数に有意な差は見出しづらいのですが、一口をされている方などの実感として、そういうところがあるのだろうと思います。

*1:そもそも毎日杯皐月賞NHKマイルCの時点で史上初です