先週土曜の京都1R、3歳未勝利戦はイイデステップ号が優勝。騎乗していたリスポリ騎手はこれがJRA初騎乗で、初騎乗初勝利の快挙となりました。最近でこそ船曳騎手、藤岡康騎手、松山騎手とぽんぽんと出てきたものの、何百人もの騎手が騎乗した中央競馬で初勝利が初騎乗時という騎手はあまりいません。
そこで今回は、初騎乗初勝利を達成した騎手を一覧しました。対象は、初騎乗が1986年以降であった騎手。このため、JRAの現役騎手では田面木騎手、木幡騎手、中舘騎手、石橋守騎手、柴田善騎手、安藤勝騎手が対象外(このうち、JRA初騎乗初勝利を挙げたのは安藤勝騎手と石橋守騎手)となります。また、初騎乗が1986年以降であれば、地方・海外の騎手も含めることとしました。以上により、調査対象はJRA騎手225名(地方出身騎手含め)、地方騎手66名、外国人騎手98名(地方・海外はJRA勝ちのある騎手のみ)です。
騎手 | 所属 | 達成日 | レース名 | 騎乗馬 |
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鈴木純児 | 愛知 | 1986.09.21 | オールカマー | ジュサブロー |
ベレス | プエルトリコ | 1986.11.23 | 神代特別 | カツダイナミック |
コーセン | 英 | 1987.11.29 | 神代特別 | ダンケリキヤ |
サンマルタン | 仏 | 1987.12.05 | 400万下 | ノスタルジア |
芹沢純一 | 栗東 | 1988.03.05 | アラブ未勝利 | カンキョウカンカン |
アントレー | 米 | 1988.11.13 | 富士S | セーラムドライブ |
堀千亜樹 | 大井 | 1989.09.17 | アラブ未勝利 | バーガンディ |
早田秀治 | 大井 | 1991.09.15 | オールカマー | ジョージモナーク |
ナカタニ | 米 | 1992.03.14 | 未勝利 | ニホンピロナーリー |
エバンス | 豪 | 1994.04.30 | 障害未勝利 | サニーズベイビー |
ヒルズ | 英 | 1995.04.22 | 京王杯スプリングC | ドゥマーニ |
福永祐一 | 栗東 | 1996.03.02 | 未勝利 | マルブツブレベスト |
池田鉄平 | 美浦 | 1997.03.03 | 未勝利 | オトコマエ |
斉藤誠 | 高崎 | 1997.08.16 | ダリア賞 | タマルファイター |
小嶋久輝 | 岩手 | 1997.09.13 | 2歳500万下 | スーパーグランザム |
穂苅寿彦 | 美浦 | 1998.03.01 | 未勝利 | オーガストキング |
フラッド | 新嘉坡 | 2000.06.04 | 安田記念 | フェアリーキングプローン |
竹下太 | 愛知 | 2000.06.25 | 3歳500万下 | ケイオーデビル |
ラム | 新西蘭 | 2001.03.24 | ペガサスジャンプS | ランド |
吉原寛人 | 金沢 | 2001.10.27 | もみじS | トゥインチアズ |
ヒルス | 新西蘭 | 2001.12.08 | 障害OP | ストーミーサンディ |
長谷川浩大 | 栗東 | 2003.03.01 | 新馬 | マイネサマンサ |
コート | 米 | 2003.11.29 | ジャパンカップダート | フリートストリートダンサー |
船曳文士 | 栗東 | 2006.03.05 | 未勝利 | マストビートゥルー |
藤岡康太 | 栗東 | 2007.03.03 | 未勝利 | ヤマニンプロローグ |
松山弘平 | 栗東 | 2009.03.01 | 未勝利 | トミケンプライマリ |
ボレル | 米 | 2009.12.05 | ゴールデンサドルトロフィー | オセアニアボス |
リスポリ | 伊 | 2011.01.08 | 未勝利 | イイデステップ |
以上の28名です。400人弱の中で7%くらい、年に1人くらいは出ている計算なので、少ないというほどでもなかったですね。内訳はJRA8人、地方7人、海外13人。
JRAの8人は全員未勝利戦での達成。いきなり勝てるくらいだから腕利きなのかと思っても、若くして引退している騎手もいるわけで、つまるところは実力というより巡り合わせ、厩舎のバックアップによる、ということでしょうか。初っ端から勝負になる馬に乗れることは新人騎手にとっては非常にいいと思うので、もう少しJRAの割合が増えてもいいと思うのですけれど。
地方騎手は初騎乗初勝利というのがもう10年近くありません。初騎乗の場合は特別指定競走の地方馬1頭のみ、ということも多く、その地方馬が勝負にならないことが多いので仕方ないのかなとも思います。堀千騎手以外は遠征した地方馬での勝利(安藤勝騎手も初騎乗初勝利は地方馬で達成)なので、勝ち負けできる馬と一緒に遠征できればいいのですが、そういうレベルの馬はなかなか地方にはいないわけで…。
海外の騎手は、特に短期免許制度が始まる前は騎乗馬が重賞等で意欲の遠征ということも多いので、遠征馬が実力さえ出せば、という感じで達成者の割合が大きいと推測します。障碍騎手でも初騎乗初勝利の騎手が3人いますし、やはり外国人騎手はそれなりにやれるのでしょうか。
何の変哲もない特別レースなのに、初騎乗初勝利騎手を2年連続で輩出した神代特別は地味にすごいですね。条件クラスの特別戦なのにこのようなことになるとは、この先見られないことのように思います。また、初騎乗初勝利をワールドスーパージョッキーズシリーズで達成したのはボレル騎手のみ、というのは年末に向けて役に立つのかもしれません。最近は日本での騎乗経験がない騎手でもWSJSで来日すれば、本戦前に何らかの馬に乗ることが多いですが、初来日でWSJSの4戦のみ騎乗、という騎手が今後来た場合は、初戦は疑ってかかってもよいのかも。
競馬学校を出たばかりの騎手だから仕方ないとはいえ、JRA組の8人というのはそれにしても少ない印象です。それにせっかくなので、今後は新馬・未勝利戦以外の条件戦、あるいは特別戦で初騎乗初勝利ということにはならないでしょうか? それを望むには、そもそも新馬・未勝利戦以外でデビューする騎手がある程度いなければならない。ここ25年の間にデビューしたJRA騎手(地方出身除く)の中で、そうした騎手がどのくらいいるのか調べてみました。
レース名 | 騎手 | レース名 | 騎手 | レース名 | 騎手 |
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障害未勝利 | 大森勇一 | 500万下 | 北沢伸也 | 900万下 | 瀬古正明 |
3歳400万下 | 武豊 | 幸英明 | 小野次郎 | ||
400万下 | 熊沢重文 | 西田雄一郎 | 橋本美純 | ||
小谷祐司 | 武士沢友治 | 渡辺薫彦 | |||
森勝義 | 荻野要 | 田嶋翔 | |||
伊藤暢康 | 中谷雄太 | 服部剛史 | |||
長峰一弘 | 野崎孝仁 | 房総特別(900万下) | 菊池憲太 | ||
町田俊夫 | 田中亮 | 1000万下 | 五十嵐雄祐 | ||
千田輝彦 | 平沢健治 | 加藤士津八 | |||
佐伯清久 | 生野賢一 | 松岡正海 | |||
アラブ300万下 | 塩村克己 | 上野翔 | 池崎祐介 | ||
寺島祐治 | 丹内祐次 | アラブ700万下 | 岸滋彦 | ||
横田雅博 | 水出大介 | 田中勝春 | |||
アラブ400万下 | 沢昭典 | 田中博康 | うずしおS(1400万下) | 山田泰誠 | |
江田照男 | 田村太雅 | 鳴門S(1600万下) | 難波剛健 | ||
小原義之 | 大下智 | アラブOP | 小林久晃 | ||
菅原隆一 | 障害OP | 佐藤年毅 | |||
岡崎特別(500万下) | 岩崎祐己 |
51人ですか。全体の約1/4が新馬・未勝利戦以外のレースでデビューを果たしますということであり、これは決して少なくない人数かと思われます。とはいえ、お世辞にも上位騎手と言えない騎手が多いですね…。武豊騎手をはじめとして、リーディング上位騎手もいることはいるのですが、むしろその他の騎手のほうに目が行きます。期待されている騎手はむしろ新馬・未勝利戦で堅実に、という傾向なのでしょうか。
特別レースデビューは4人。全体の2%程度とあっては、初騎乗初勝利を特別レースで挙げるというのはほぼ絶望的かと思われます。オープンクラスでのデビューは2人、いずれも平場オープンで、オープン特別でのデビューはいません。松岡騎手などのように12Rでデビューという例もないでもないですが、普通ならメインレースに入る前に騎乗しているわけで、減量の恩恵もない中でオープン特別クラスでデビューというのは今後も可能性はゼロに近い、いわんやそこで初勝利をや、ですね。障碍競走が初騎乗で初勝利、というのもなかなか渋いと思うのですけど、デビュー戦が障碍競走だったのは2人。うち大森騎手は平地競走に騎乗せず、障碍競走一本で現役を終えたため、実質佐藤年騎手のみのようなもの。ネタ的な扱いをされることもある佐藤年騎手ですが、こんなところで意外な記録を打ち立てていました。ともあれ、障碍競走で初騎乗初勝利、というのも難しそうです。人数的にも、現在のクラスで言うところの平場500万下なら可能性がありそうですね。現在の編成で行くと、3月のローカル開催は平場500万下の競走も多いですし、狙いはここでしょう。
新人騎手のデビューまで既に2ヶ月を切っています。順調なら今年のデビュー予定は7名、各人の所属厩舎がなかなか揃っているため、去年は見られなかった初騎乗初勝利が見られるかもしれませんね。初騎乗初勝利だけなら、藤沢和厩舎予定の杉原君が有力ではないでしょうか。新馬・未勝利戦以外での初騎乗初勝利へ期待をかけるなら、栗東デビュー組はおそらく小倉デビューでしょう(平田厩舎予定の藤懸君は阪神デビューかもしれませんが)し、そこに注目でしょうかね。もちろん、騎手の腕はもちろん、厩舎のバックアップもあって実現可能なことかと思うので、厩舎関係者にはしっかりしたバックアップを期待したいものです。早めにひとつふたつと勝てればいい循環が生まれやすいことは、過去の多くの騎手が証明しているので…。