先日少し触れたように、3月開業の高野厩舎が既に17勝、全国リーディングでも69位(現役厩舎数は211)と大健闘しています。同じ17勝の厩舎を見ますと、松田国厩舎、松永幹厩舎、田村厩舎、相沢厩舎、鶴留厩舎、崎山厩舎などなど錚々たる顔触れ。この中には本来もう少し上位にいるはずの厩舎も含まれますが、形はどうあれこれらの厩舎と肩を並べていることから、高野厩舎は開業初年度にして既に中堅厩舎のようだとも言えそうです。出走数が多くないとはいえ、今年の勝率13.9%は現時点で全国10位。中堅どころか一流厩舎なのかもしれません。
高野厩舎のように、開業初年度に大きく勝った厩舎はあまりなかったような気がします。もしかしたら、開業初年度のレコードなのかもしれません。ということで、調べられる範囲で過去の厩舎の開業初年度の勝利数を調べてみました。調査対象は、初出走が1986年以降であった199厩舎、既に解散している厩舎を含みます。開業初年度の勝利数ということで、基本は多くの厩舎が開業する3月から12月までで調べています。ただし、今年の大和田厩舎、木村厩舎のように、イレギュラーな開業も少なくありません。そのような厩舎については、初出走の月から10ヶ月間(3〜12月が10ヶ月のため)の成績を調べて、3月開業厩舎との条件をできるだけ揃えることとしました。例えば、7月初出走の厩舎は7月〜翌年4月、12月初出走の厩舎は12月〜翌年9月を集計対象としています。
結果は以下のとおりです。厩舎名に初出走年月を付記しました。初出走月が書かれていない厩舎は、すべて3月開業組です。
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角居厩舎のようにリーディング上位を賑わす厩舎が開業初年度から飛ばしていたことを感じさせる中、ここ25年ほどの新規開業厩舎の勝利レコードは何と嶋田功厩舎。今年4勝、昨年に至ってはわずか1勝の厩舎で、開業時点の勢いからは想像もつかなかったであろう凋落ぶりです。初年度から多く勝っている厩舎は一流厩舎ばかりだね、高野厩舎も将来が約束されたようなものだね、という論調でまとめられたらと思ったら、一位が嶋田功厩舎ではあまり説得力がありません…。
嶋田功厩舎がなぜ初年度にここまで勝てたか、当時を知らないわたしには知る術がないのですが、あえて推測するなら騎手時代の人気に引っ張られたのでしょうかね。騎手時代はイケメンジョッキーとして鳴らしたらしい嶋田功師、その人気にあやかるといいますか、アイドルジョッキーに所有馬を預託したいという馬主が当時多かったとしても不思議はありません。20年以上も前となれば、今ほど厩舎毎の馬主の棲み分けもできていなかったでしょうし、そんな感じで馬が集まったのかな、と想像します。単純に、開業時に引き継いだ厩舎が良かった、ということかもしれませんが。
トップが嶋田功厩舎で気勢をそがれた感はありますが、それでも一部の厩舎を除くと、初年度から勝ち星を重ねた厩舎は今もよく知られている厩舎が多いですね。15勝くらいがひとつの目安でしょうか、初年度に15勝以上できれば、厩舎の前途は明るい、成功する可能性が高いと言えるのではないでしょうか。最近だと小崎厩舎、松永幹厩舎、村山厩舎、鹿戸雄厩舎がよく勝っていたようですね。これらの厩舎は開業から5年も経っていませんが、みな既にGI馬(JpnI馬)を輩出しています。そう考えると、高野厩舎も近くGIで優勝するような馬を管理することになるかもしれないですね。
もちろん、いま苦戦している厩舎が先々まで苦しいかというと別にそういうわけでもなく、現在出走すれば馬券圏内という印象すら受ける堀厩舎で6勝、今をときめく池江厩舎はわずか4勝、凱旋門賞2着馬を2頭出した二ノ宮厩舎やいまやリーディング常連の音無厩舎も3勝と、初年度にあまり勝てなかった厩舎でも先々大きく飛躍する可能性はあるわけで、今年の開業組もいまの成績だけで将来を決めつけてしまうのは早計でしょう。全体の傾向としては4〜9勝くらい、という厩舎が多いので、そういう意味では今年開業組はほとんどが現時点で及第点の成績、と言えるのではないでしょうか。
不名誉な記録に目を向けると、開業初年度で勝てなかったのはいまのところ和田一厩舎のみ。千田厩舎がこれに肩を並べるかどうか、という残り6週です。池江郎厩舎時代にディープインパクト号などを手掛けた市川厩務員が移っているなど、スタッフ面でも問題がないはずで、ここまで苦戦するとは思わなかったというのが正直なところ。前にも述べているように、ひとつ勝てるとあとは順調に行けると思うのですが…。
それにしても野元厩舎の一部を地盤にしながらの高野厩舎のこの躍進には目を見張るものがありますね。野元厩舎の主戦であった野元騎手が重石になっていたという説はあるものの、高野厩舎が主に引き継いだエイシン馬・エーシン馬には野元騎手が騎乗することはほとんど許されなかったため、その指摘は正しくないと考えます。やはり高野師の腕、ということになるのでしょうかね。松田国厩舎が今年前半大不振に陥ったのは厩舎の中心だった高野師が抜けたため、とも言われていることから、高野師の腕が相当なものであると想像されます。これだけの成績を挙げると馬も集まりやすくなるでしょう(初年度好成績の厩舎に現在も活躍している厩舎が多いのは、こうした要因もあるように思います)。今後の活躍が楽しみですし、残り6週で20勝の大台まで3勝、嶋田功師超えまで5勝。決して無理な数字ではないだけに、こちらの記録達成なるかも注目です。