中央競馬のためにならない話

客観的事実・データから妄想を繰り広げます。

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吉田隼騎手、大スランプ

吉田隼騎手は美浦の若手のホープ。デビュー初年度こそ3勝、2年目も23勝でしたが、3年目で大幅に勝ち星を伸ばし、減量の取れた4年目に完全に関東上位騎手としての地位を確立。2007年には全国11位、関東6位になるなどリーディング上位にも名を連ね、一気に知名度を上げました。吉田豊騎手の実弟としても知られていますね。

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年・年月    着別度数                     勝率  連対率 複勝率 単回値 複回値 平均着 平人気
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2004年       3-  2-  6-  9- 13-166/199    1.5%   2.5%   5.5%     25     40 10.0着 11.2人
2005年      23- 29- 27- 21- 29-253/382    6.0%  13.6%  20.7%     76     99  7.7着  9.0人
2006年      60- 58- 47- 64- 67-519/815    7.4%  14.5%  20.2%     75     69  7.7着  7.9人
2007年      73- 85- 66- 72- 69-518/883    8.3%  17.9%  25.4%     77     75  7.0着  6.6人
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ここまで勝ち星を挙げるとあとは放っておいても順当に進む、と思いがちですが、この吉田隼騎手、ここへ来て大スランプに陥っているようです。

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年・年月    着別度数                     勝率  連対率 複勝率 単回値 複回値 平均着 平人気
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2007年      73- 85- 66- 72- 69-518/883    8.3%  17.9%  25.4%     77     75  7.0着  6.6人
2008年      66- 52- 62- 62- 63-507/812    8.1%  14.5%  22.2%     77     69  7.5着  6.9人
2009年      19- 22- 23- 22- 31-289/406    4.7%  10.1%  15.8%     68     64  8.6着  7.8人
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何でしょうかこの低調ぶり。成績は大幅に落ちているのに単複の回収率がほとんど変わらないのは穴を開ける頻度は増したということですが、かといって穴騎手として知られているわけではなし、どちらかというと本命党向けの騎手のはず。今年の成績を月別に見てみます。

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年・年月    着別度数                     勝率  連対率 複勝率 単回値 複回値 平均着 平人気
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2009年1月   1-  7-  4-  2-  1- 24/ 39    2.6%  20.5%  30.8%     62    144  7.9着  7.5人
2009年2月   1-  0-  1-  1-  5- 39/ 47    2.1%   2.1%   4.3%     10     14  9.7着  8.3人
2009年3月   2-  7-  6-  1-  5- 44/ 65    3.1%  13.8%  23.1%     35     98  8.2着  7.6人
2009年4月   3-  4-  1-  3-  9- 39/ 59    5.1%  11.9%  13.6%     13     25  8.3着  7.0人
2009年5月   5-  1-  6-  6-  5- 45/ 68    7.4%   8.8%  17.6%    147     56  7.9着  7.0人
2009年6月   7-  1-  2-  3-  2- 36/ 51   13.7%  15.7%  19.6%    231     91  8.6着  8.9人
2009年7月   0-  2-  2-  5-  4- 51/ 64    0.0%   3.1%   6.3%      0     46  9.5着  8.7人
2009年8月   0-  0-  1-  1-  0- 11/ 13    0.0%   0.0%   7.7%      0     23  8.6着  7.2人
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1月は途中で落馬負傷、2月は復帰後騎乗数を制限したため騎乗数はやや少ないながらわずか1勝。月間1勝というのは久しくなく、ブレイク直前の2006年2月に1勝、3月に0勝ということがあって以来です。それでも少しずつ勝ち星を増やし、2回福島開催に入ると6勝を挙げて復調なったかと見ていたのですが、7月はとうとう1勝もできず。もちろん、2回新潟開催は未勝利。現在78連敗中です。
上記の不調ぶりですから現在に限らず今年は大型連敗が多く、とにかく波があります。現在のペースだと年間40勝も達成できなさそうな状況、まだ若いだけに身体の衰えというわけでもなし、なぜこのようになったのか推測というか妄想してみます。

1. 年明けの落馬負傷

先に書いたように、年明け早々の京成杯にて落馬負傷しました。休養は2週間のみで、2月には騎乗数を制限しながら復帰したのですが、月別成績でわかるようにかなり悪い成績。平均人気から、馬の質もさして良くなかったと推測されますが、ここで結果を残せなかったことがその後騎乗する馬の質に影響してきているのかな?と思わないでもありません。エージェントがついているはずなので、そうそう質が変わるものでもないとは思うのですが…。また、実のところ、負傷が完全に癒えていないのでは、どこか痛いところがあるのでは?とも勘ぐってしまいます。

2. 小倉武者修行

去年、吉田隼騎手は夏の小倉開催に参戦しました。武豊騎手でしたか、栗東の騎手からの勧めがあったと記憶しています。ほぼフル参戦で、そこそこの成績を残すこともできましたが、今になって思えばこれがマイナスに働いたということはないでしょうか。
今の中央競馬は乗り替わりが当たり前、下手したら結果を出しても乗り替わり、ということがありますけど、それでも基本は継続騎乗だと思います。特に夏競馬は次年度を見据えて若駒、2歳馬が多数デビューする時期。ここで結果を出してお手馬を増やし、翌春のクラシックシーズンへ繋げていく、というイメージがあります。そういう時期に関東の騎手が関西の主場に長期間滞在するとどうなるか。関東の期待の若駒は他の騎手が乗る。関西の期待の若駒に乗ることはできるかもしれないが、小倉終了後もその馬のために毎回京都や阪神まで遠征してくるか? という感じで、小倉から帰ってきたら有力馬は軒並み他の騎手が手をつけていて、自分の入り込む余地があまりなかった、という結果にならなかっただろうかという気がします。もちろん、小倉開催になると小倉に滞在して、関東の滞在馬を中心に調教をつける騎手は一定数います。ただそうした騎手は、例えば今年の鈴来騎手や一時期の高橋智騎手・田辺騎手のように、普段は騎乗数に恵まれない騎手(調教師の依頼もあるのかもしれませんが)、という印象があるので、吉田隼騎手の場合とは少し違うと思っています。
さらに妄想を膨らませると、競馬サークルは閉鎖的というイメージというか偏見があります。そのような環境下にあって、美浦の年配の調教師連に「まだ若いのに小倉なんぞ行きおって」みたいな感情が発生して、それで馬が回らなくなった可能性もあるのでは、と感じています。

3. ブログの存在

生の声を伝えるJRA騎手というのは少し前までほとんどいなくて、武豊騎手の日記、蛯名騎手のメッセージ、藤田騎手のブログなど、いわゆるトップジョッキーの一部のみがそうした場を持っていたと記憶しています。その状況が一変したのが近年のブログの流行。馬券ブレイク!の仕掛けにより、昨年多くの騎手・調教師が公式ブログを開設させました。最初はライブドアブログでしたが、この春に一斉にアメーバブログへ移行。ライブドアかわいそうです。
公式ブログラッシュの流れの中に吉田隼騎手もいました。公式ブログの中ではわりと早くスタートした方ですし、一時期の藤田騎手や三浦騎手のような更新頻度でもないので、負担はそう大きくないとは思うのですが、根が真面目そうですし、ブログの寄せられる応援コメントを見てプレッシャーに感じてしまうなんてことはないかなあと邪推してしまいます。
実際のところ、ブログ開設がプラスになるかマイナスになるかはそれぞれで、上村騎手は開設直後に10年ぶりの重賞勝利、さらにGIも制覇といいこと続きだった(最近の突然の絵文字連発は何があったのでしょうか)一方で、田中勝騎手は開設直後に自身最悪の長期連敗。柴山騎手も幾分か低迷して結局アメブロに移行せず休止しました。吉田隼騎手も、ブログがマイナスになっている側かもしれません。そもそも、芸能人ならいざ知らず、基本的に変化が少なく、しかも生の声が一番聞きたい競馬開催日は調整ルームで投稿が制限される、という競馬の騎手にはブログはあまり合わないのかもしれませんね。

…思いの外長くなってしまいました。ともかく、現在の状況は非常に馬券が買いづらい。買うことも多い騎手、というか買う馬に乗ることも多い騎手だけに、馬券を買う側とすれば、復調するにしても、落ち込んだままになるにしても、早く安定した成績に戻ってほしいところです。