今週の高松宮記念にはアルティマトゥーレ号が出走します。前哨戦のシルクロードSを勝利、キンシャサノキセキ号と1番人気を争うくらいの人気を集めることが予想されます。6歳という年齢の割にキャリアが少なく、まだまだやれそうではありますが、馬主はクラブ法人の社台レースホース、クラブ内規により6歳の3月いっぱいでの引退が定められており、今回が引退レースになります。
あらかじめ決まっている引退レースというものは、競走馬生活以上に長い繁殖生活が控えていることがほとんどで、特に牡馬よりも繁殖に回る可能性の高い牝馬については、引退レースで成績を残すというよりは無事回ってくることが大事、という見方が多くなることでしょう。一方で「ここで結果を残して箔をつけて繁殖入りしたい」という思いもまたあるでしょう。では、実際のところ、クラブ牝馬は引退レースでどのような成績を残しているのでしょうか。調べてみました。
一口界にはさまざまなクラブがありますが、今回は社台系の一口牝馬に限定しています*1。「社台系」の括りにも諸論あるでしょうけれど、対象は社台レースホース、サンデーレーシング、キャロットファームの3法人としました。これら3法人の競走馬で、重賞がラストランとなった4歳以上の牝馬の引退レースの成績を抽出してみると以下のようになります。
◆年齢別集計 集計期間:1986. 2.15 〜 2009. 9.13 ----------------------------------------------------------------- 年齢 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回値 複回値 ----------------------------------------------------------------- 4歳〜 2- 6- 1- 5- 2-34/50 4.0% 16.0% 18.0% 39 59 -----------------------------------------------------------------
おや。あまり良くないですね…。内規により引退となる6歳で、引退レースに重賞を走った場合の結果は以下のとおりとなります。
----------------------------------------------------------------- 年齢 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回値 複回値 ----------------------------------------------------------------- 6歳 1- 2- 1- 1- 0-12/17 5.9% 17.6% 23.5% 53 110 -----------------------------------------------------------------
若干率が上昇しているものの、あまり差はないですね。6歳の引退レースで3着以内になった馬の内訳は、1着:ビハインドザマスク号(京都牝馬S)、2着:ハッピーパス号・ウイングレット号(ともに中山牝馬S)、3着:ダンスオールナイト号(中山牝馬S)となっています。
偶発的な故障による引退というケースを含むことも承知で、5歳時に引退した馬について同様に見ると以下のとおり。
----------------------------------------------------------------- 年齢 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回値 複回値 ----------------------------------------------------------------- 5歳 1- 4- 0- 3- 1-18/27 3.7% 18.5% 18.5% 39 40 -----------------------------------------------------------------
3着以内になった馬の内訳は1着:ブルーメンブラット号(マイルチャンピオンシップ)、2着:ダイナバラード号(阪神障害S(春))、シングライクトーク号(阪神牝馬S)、フラッグシップ号(福島牝馬S)、スリープレスナイト号(セントウルS)です。
こうして見ると、引退レースのクラブ牝馬がアタマで来るケースは非常に低いと言えそうです。とくに5歳時に馬券になった最近のメンバーは、ブルーメンブラット号がマイルCS優勝後も現役続行に含みを持たせた段階、フラッグシップ号が次レースに備えている中で急死、スリープレスナイト号がスプリンターズSに向かう予定で故障発症でリタイア、でしたから、これが引退レース、と事前に陣営が位置付けていたわけではないですし。
そう考えるとアルティマトゥーレ号も、いかに陣営が「勲章を手に繁殖へ」と息巻いても苦しいのでは?という予測が成り立ちそうですが、一概にそうとも言えないと思います。
ひとつには、クラブ系牝馬の6歳春の引退レースのほとんどが中山牝馬Sである点。上記の17頭中10頭までが中山牝馬Sで引退しており、GI級のレースへの出走となるとフェブラリーSに出走したデアリングハート号のみです。路線の関係とはいえ、この時期にGIで終えようというのは陣営の意気込みが感じられるものであり、決して無下に扱えないように思われます。
もうひとつは、人気の点です。冒頭に述べたように、今回のアルティマトゥーレ号の単勝人気は、おそらく3番人気以下にはならないでしょう。これまで6歳で引退した馬の単勝人気を見ると、最高で3番人気(ウイングレット号とディアデラノビア号)、唯一勝利したビハインドザマスク号でも4番人気でした。2番人気以上で引退レースを迎えた6歳の社台系のクラブ牝馬は今までおらず、そこまで支持されるのであれば走ってもおかしくないのではないでしょうか。