毎週、各騎手の騎乗数や各厩舎の出走頭数を整理していると、管理馬をよく出走させている厩舎、出走が少ない厩舎というのがおぼろげながらわかってきます。前者の代表格は矢作厩舎や和田道厩舎、数年前までの高橋成厩舎。これらの厩舎は年間通して延べ400頭前後を出走させていまして、年400頭というと、1年50週、土日で100日、とすると週平均で8頭、1日平均4頭、各場に1〜2頭はコンスタントに出走させている計算ですから、いかにも多いです。一方、後者の代表格は佐藤全厩舎、二本柳厩舎など。まあこのあたりは、そもそも馬房数も管理馬も少なく、仕方のないところはありますが、メディアで名前がよく出る厩舎でも出走数が少ないところがあるわけです。今年のここまでの出走数が少ない厩舎を順に挙げてみます。
出走数 | 厩舎 |
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重賞等、メインレース周辺の競走しか見ない場合には見慣れぬ厩舎が多い中、伊藤正厩舎と増本厩舎が目立ちます。とくに伊藤正厩舎については、「あれ、今週も1頭だけか」「今週もゼロか」と毎週のように気になっていたところ。ネヴァブション号やエアシェイディ号を擁し、昨秋からネヴァブション号絡みでたびたび紙面を賑わしたのは記憶に新しいところ。それでもこの出走数ですか。どういうことでしょう。
まあ、管理馬のめぐりあわせでたまたま1月2月と出走数が少なかっただけ、という見方もできましょう。昨年などは出走数が多かったかもしれません。ということで、ここ10年、2001〜2010年の出走数を見てみます。
◆年・年月別集計 調教師:伊藤正徳 集計期間:2001. 1. 6 〜 2010.12.26 -------------------------------------------------------------------------- 年・年月 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回値 複回値 -------------------------------------------------------------------------- 2001年 21- 15- 18- 17- 22-130/223 9.4% 16.1% 24.2% 73 67 2002年 31- 27- 28- 27- 16-149/278 11.2% 20.9% 30.9% 98 96 2003年 22- 29- 17- 23- 15-146/252 8.7% 20.2% 27.0% 48 56 2004年 20- 28- 18- 27- 28-148/269 7.4% 17.8% 24.5% 74 82 2005年 20- 12- 18- 10- 16-138/214 9.3% 15.0% 23.4% 78 109 2006年 24- 20- 21- 19- 13-146/243 9.9% 18.1% 26.7% 101 83 2007年 21- 18- 24- 19- 4-117/203 10.3% 19.2% 31.0% 85 82 2008年 20- 23- 12- 13- 8-113/189 10.6% 22.8% 29.1% 36 69 2009年 13- 13- 11- 8- 9-102/156 8.3% 16.7% 23.7% 65 53 2010年 16- 10- 18- 13- 13-105/175 9.1% 14.9% 25.1% 70 83 --------------------------------------------------------------------------
…明らかに減少傾向、ここ数年は延べ180頭前後にとどまっています。これは矢作厩舎の半分以下で、去年出走数が同じくらいだった厩舎を挙げますと、阿部厩舎、加藤和厩舎、柴田見厩舎、嶋田功厩舎、鈴木勝厩舎、成島厩舎、牧浦厩舎、吉岡厩舎(以上、昨年170頭台の厩舎)となります。他厩舎に比べ、知名度、管理馬の質を考えるとこの程度の出走数にとどまっているのは何か不自然のような気がします。
2004年には約270頭の出走もあった厩舎が約100頭も出走を減らしているのも気になります。何か違いがあるのでしょうか。2004年と2010年の、出走が多かった管理馬を並べてみます。
年 | 出走数 | 管理馬 |
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2004 | 11 | |
10 | ||
9 | ||
8 | ||
7 | ||
2010 | 11 | |
9 | ||
8 | ||
7 |
まず、一頭あたりの出走数が減少しているといえそう。2004年には二桁出走が7頭いましたが、2010年はわずか1頭。無理使いをしなくなったといえばそれまでかもしれませんが…。
馬主で見ると、2004年の出走数上位は、社台レースホース、ウイン、ロードホースクラブ、ヒダカ・ブリーダーズ・ユニオンといったクラブ馬が中心。一方、2010年は廣崎利洋氏のトレノ馬・アスク馬・ネヴァ馬(ネヴァ馬の名義はティーエイチですが)、ラッキーフィールドのエア馬、といった個人馬主がメインです。メインというか、相対的にそちらが多くなっているとも言えます。何しろいま現在、クラブ馬が全然いないんですね。2月21日時点での管理馬28頭中、クラブ馬はゼロ。既に抹消された馬を含めても、4歳世代でヒダカ・ブリーダーズ・ユニオンが1頭、5歳世代に社台レースホースとロードホースクラブが1頭ずつ、6歳世代に社台レースホースとウインとヒダカ・ブリーダーズ・ユニオンが1頭ずつ、というくらいで、世代の1/3程度をクラブ馬が占めていた頃から激減しています。出走数減の主因には、こうした変化があるのではないでしょうか?
ここまでクラブ馬が減少したのはなぜなのでしょう。最近でこそクラブ馬の活躍馬を出していないものの、それはそもそもの弾が少ないからで、それ以前であれば、ローエングリン号をはじめ、クラブ馬の活躍馬を何頭か出していた厩舎。成績で切るような厩舎でもないと思います。クラブとの関係が悪化した、ということであれば、すべてのクラブが預託を減らす必要はないわけですし、社台系に関しては、吉田照哉氏の所有馬が入ってきています。そう考えると、厩舎側が積極的でなくなっているんでしょうかねえ…。もっとも、社台系の新クラブであるジーワンサラブレッドクラブから今年デビューの2歳馬(先日のフェブラリーSで健闘したマチカネニホンバレ号の下)を預かる予定はあるようで、厩舎におけるクラブ馬の位置付けがよくわからないです。
ちなみに、伊藤正厩舎とともに出走数の少ない増本厩舎は、昨年の出走数などは伊藤正厩舎よりさらに少ないのですが、ここ10年ほどはだいたい同じ出走数でした。こちらも管理馬数の割に少ないですね…。最近だとサンライズマックス号が出てきたり、瀬戸口厩舎からマルカラスカル号を引き継いだりと、出走数が少ないながら厩舎経営は問題なさそうですが、馬主さんは納得しているんでしょうかね…?