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今年の日本ダービーは21世紀初のスケールでお送りします

3歳クラシックも大詰め。週末は優駿牝馬、再来週には東京優駿日本ダービー)が開催されます。東京優駿は、サンライズプリンス号の故障離脱があったものの、本番に至るまでのトライアルレース・ステップレースが軒並み好時計で、強い勝ちぶりだった皐月賞馬、ヴィクトワールピサ号も断然人気というわけではなさそう、と高いレベルでの混戦模様。既に優駿牝馬を通り越して話題沸騰といった感じです。


さて、3歳クラシックのトライアルレースが始まる前に、クラシック出走のための収得賞金のボーダーラインをまとめた記事を書きました。当時のまとめと今年の場合とを比較して答え合わせをしますと、桜花賞は収得賞金1,200万円のモトヒメ号が無抽選で出走ということで例年並み、皐月賞は収得賞金1,200万円のリルダヴァル号が無抽選で出走、こちらもほぼ例年並みのボーダーラインでしたが、週末の優駿牝馬は現時点で収得賞金1,350万円で抽選対象と、過去に例のない狭き門となっています。
そして昨日登録馬が発表された東京優駿。以前の記事の再掲になりますが、過去10年のボーダーラインは以下の通りです。

収得賞金出走枠数抽選倍率該当馬
20001,6201クリノキングオー
20011,3501マイネルライツ
20021,75033/4ゴールドアリュール・サスガ・モノポライザー
20031,5001無抽選チャクラ
20042,0002無抽選アドマイヤビッグマイネルマクロス
20051,3501無抽選アドマイヤフジ
20061,75022/4ナイアガラ・パッシングマーク
20072,0001無抽選ゴールドアグリ
20082,1001無抽選レッツゴーキリシマ
20092,4001無抽選アイアンルック

例年高い収得賞金が必要、ここ3年は2,000万円持っていないと賞金順では出走できない、オープン特別勝ちもしくは2勝+重賞2着は最低条件、というラインだったわけですが、青葉賞は2着まで、プリンシパルSは1着のみとトライアルの出走枠を減らしたり、諸々の因子が作用したりした結果、今年の登録馬ならびにボーダーラインは以下のようになっています。

収得賞金馬名備考
10,350ヴィクトワールピサ皐月賞1着
3,300ヒルノダムール皐月賞2着
2,850エイシンフラッシュ皐月賞3着
5,150ローズキングダム皐月賞4着
4,550ペルーサ青葉賞1着
2,000トゥザグローリー青葉賞2着
1,850ルーラーシッププリンシパルS1着
7,750ダノンシャンティ
4,200ゲシュタルト
3,900アリゼオ
3,300ハンソデバンド
2,950コスモファントム
2,800サンディエゴシチー
2,000シャイン
1,850トーセンアレス
1,700レーヴドリアン
1,200リルダヴァルここまで出走可
900トウカイメロディ1/3抽選
900ビートブラック
900メイショウウズシオ
400タニノエポレット除外対象

…収得賞金900万円の馬が出走できる! 3歳500万下を勝っただけの馬(抽選対象の3頭はいずれも特別勝ちではありますが)がダービーに出走できる! ボーダーラインのまとめ記事で、「少し下がるか横ばいくらい」と予想していたものの、ここまで下がるとは予想していませんでした。21世紀に入ってからもっともボーダーラインが低いことは言うまでもありません。リルダヴァル号陣営など「秋に賭けます」と言ってたのに。仮にトライアルレースの出走枠が今まで通りで、上記の登録メンバー+青葉賞3着+プリンシパルS2着だったとすると、収得賞金900万円の馬はもちろん出られず、リルダヴァル号も除外対象、レーヴドリアン号がギリギリということになるので、その場合のボーダーラインはほぼ例年並みと言えそう。そうすると、トライアルの出走枠を減らした効果・影響というのが思いのほか大きかったということになるのかもしれません。


それにしてもトライアルの出走枠の違いはあるとはいえ、過去にこれほどボーダーラインが低かったダービーはあったのでしょうか。調査済みの2000年以前、フルゲートが18頭になった1992〜1999年のボーダーラインについても調べてみました。なお、青葉賞の優先出走枠は1992〜1993年は上位2頭、1995年まではNHK杯の上位3頭にも優先出走権付与、プリンシパルSNHK杯の代替レースとして1996年から施行されています。

収得賞金出走枠数該当馬
19928005ウィッシュドリーム・オースミコマンド・カミノエルフ・ゴッドマウンテン・ブレイジングレッド
19931,7001サンエイキッド
19941,7003スギノブルボン・トロナラッキー・マルカオーカン
19951,7001イブキラジョウモン
19968001アドマイヤビゴール
19971,5501エアガッツ
19981,0501ビルドアップリバー
19991,0501ノーザンカピタン

おお、ありました。フルゲート18頭元年の1992年は現在の収得賞金900万円に相当する800万円の馬が5頭も出走。この年は今ほど有力馬が分散せず、ミホノブルボン号やナリタタイセイ号などの一部の有力馬が根こそぎ賞金を持っていっていたことも要因のひとつとして挙げられそう。1996年も2戦2勝(しかも2勝目は平場競走)のアドマイヤビゴール号が出走しています。ちなみにこの年はフサイチコンコルド号が史上最小キャリアで優勝した年ですが、当のフサイチコンコルド号も収得賞金1,300万円と、例年なら除外されてもおかしくない賞金でした。そうすると900万円の馬が出走できる今年に重ねると、フサイチコンコルド号に相当するのはリルダヴァル号になるのでしょうか…? 戦績がまるで違いますけどね。あと、全体的に20世紀のダービーの方が、賞金のボーダーラインが低めですね。


ボーダーラインがこんなことになって、収得賞金900万円超えの3歳馬を管理している陣営はどういう思いでいるのでしょう。皐月賞ならいざ知らず、ホースマンの夢であるダービーですよ。出走しようとは思わなかったのでしょうか? 全ホースマンの目標、という形容は昔の話? …とはいえ、故障してしまった馬や距離や芝に適性がなさそうな馬を除くと、該当馬があまりいないのも事実。皐月賞にも出走したバーディバーディ号(3,250万円)の自重、あるいはマイル重賞勝ち馬のコスモセンサー号(2,850万円)やガルボ号(2,350万円)の自重、それに牝馬を除くと、あとはきさらぎ賞優勝のネオヴァンドーム号(2,350万円)や、青葉賞にも出走して、ダービーを目標にしていたはずのレッドスパークル号(1,350万円)くらい。このあたりが出てこないのはちょっと残念です。結果論ですが、レッドスパークル号は除外覚悟で皐月賞直行したほうがよかったのでは…。でも例年のボーダーだとどう考えても除外だし…賞金が微妙な陣営は本当に難しいですね。
それにしてもせっかくここまでボーダーラインが下がっていてこの登録頭数なら、中間の陣営の動き次第ではタニノエポレット号が出走できるなんていう空前の事態になりかねないですね。上位陣が激しい争いを繰り広げた陰で、未勝利を勝っただけの馬がダービーに出られたんだよ、ということになると、勝負としてもネタとしても語り継げるダービーになるようには思います。