中央競馬のためにならない話

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3年目騎手の将来を推測する2013

1月中にやるつもりがもはや2月末ですが、せめて新人騎手がデビューするまでは、ということでやります。


まず昨年の予測の答え合わせを。川須騎手はローカルビッシリというほどではなく、関西ローカル開催時は基本ローカル、関東ローカル開催時は主場中心でたまにローカル、という感じの騎乗傾向でした。主場の割合がそれなりに増えたはずですが、それでも昨年は69勝と、踏みとどまった印象です。重賞でも3勝を挙げ、通算200勝も目前。もう心配ないと言えるでしょう。
高倉騎手は初夏に初の重賞優勝を果たし、夏には減量特典を外しましたが、そこから3ヶ月以上勝てない大スランプ。いまのところ騎乗数は少なくないですが、減量特典が外れてからの成績はあまり芳しくありません。昨年くらいの、年間30勝できれば十分という見方もありましょうが、1年目2年目の活躍を思うとちょっと物足りないですね。ここ1〜2年が勝負になりそうです。
西村騎手はそこそこ健闘したものの、1kg減には届かず減量期間が終了。ローカルではたびたび穴を開ける存在ですが、昨年は特別競走でなんと掲示板なしという惨敗ぶり。3月以降、減量が取れてからが少し不安になる数字です。平野騎手はローカルを回るなら、などと昨年書きましたが、そういうことも吹っ飛ぶ大怪我で半年棒に振りました。そのうえ、怪我の前も復帰後も勝てず、3年目にして年間未勝利に終わってしまいました。このままでは相当苦しいです。
昨年の年明けの競馬で栗東留学していた水口騎手はそのまま栗東へ移籍。減量ニーズもあって、そこそこの騎乗数を確保しています*1。特別競走でも1勝し、起用してくれる厩舎もある程度いますので、減量が取れても向こう数ヶ月は大丈夫かもしれません。もっとも、減量なしで結果を出せないと来年には危うくなっている可能性もあります。ある意味いちばん予想に近かったのが菅原騎手ですが、仕方ないですかね。昨年は2度目の年間未勝利。いま小倉で騎乗していますが、騎乗数が伸びません。


さて、今年3年目となる騎手は嶋田騎手、杉原騎手、藤懸騎手、横山和騎手、森騎手、花田騎手、高嶋騎手(現時点での通算勝利順)。今回のメンバーは地味ですね…。彼らについて、将来を展望します。


わたしが勝手に提唱している若手騎手の生き残り条件の目安は以下の通りです(このへんは例年のコピペです)。

・デビュー2年目を終えるまで(12月まで)に特別競走最低1勝、できれば2勝以上。
・特別競走の勝率・連対率・複勝率が、平場競走のそれに比べ、5〜7割程度で歯止めがかかっている。
・ただし、特別競走の勝率・連対率・複勝率が、平場競走のそれに比べて5割以下の項目がある場合は要注意。

これを各騎手の昨年までの戦績に照らし合わせてみます。

  集計期間:2011. 3. 5 〜 2012.12.24
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クラス    着別度数                     勝率  連対率 複勝率 単回値 複回値
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嶋田騎手
  平場    35- 39- 45- 23- 43-596/781    4.5%   9.5%  15.2%     79     93
  特別     1-  1-  1-  1-  2- 61/ 67    1.5%   3.0%   4.5%      3     39
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杉原騎手
  平場    28- 24- 25- 42- 36-564/719    3.9%   7.2%  10.7%     47     48
  特別     1-  0-  2-  4-  2- 61/ 70    1.4%   1.4%   4.3%     20     22
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藤懸騎手
  平場    20- 35- 42- 50- 49-545/741    2.7%   7.4%  13.1%     53     69
  特別     0-  1-  4-  2-  3- 56/ 66    0.0%   1.5%   7.6%      0    146
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横山和騎手
  平場    15- 15- 19- 21- 26-384/480    3.1%   6.3%  10.2%     33     76
  特別     1-  0-  0-  1-  0- 23/ 25    4.0%   4.0%   4.0%    135     81
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森騎手
  平場     7- 16- 15- 16-  9-289/352    2.0%   6.5%  10.8%     13     48
  特別     0-  0-  0-  0-  1-  3/  4    0.0%   0.0%   0.0%      0      0
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花田騎手
  平場     7-  6- 11- 16- 15-315/370    1.9%   3.5%   6.5%     33     35
  特別     0-  0-  0-  0-  0-  5/  5    0.0%   0.0%   0.0%      0      0
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高嶋騎手
  平場     0-  4-  4- 10-  7-201/226    0.0%   1.8%   3.5%      0     27
  特別     0-  0-  0-  0-  0-  2/  2    0.0%   0.0%   0.0%      0      0
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うーむこれは…。重賞だけでなく、下級条件も買って、なおかつ騎手にある程度目をやって馬券を検討する方でも、これらの騎手の印象はそれほどないように思うのですが、そのままの結果になっている感じです。

嶋田騎手が一応の勝ち頭ですが、特別競走の勝率・連対率・複勝率はいずれも平場競走の1/3以下。特別競走の1勝は昨夏の時点で2013年のアイビスサマーダッシュはこの馬で決まりとまで言われたエバーローズ号、これは騎手の腕が云々というよりも馬が図抜けていた可能性が高く、あまりアテにできないようにも思います。今年は1kg減まではいけるでしょうが、なかなか勝てない期間も発生しやすい騎手で、先々どうでしょう。
追う杉原騎手・藤懸騎手は所属厩舎が優秀(厩舎の上位馬には騎乗できませんが)ということもあり、嶋田騎手を追い抜いていいものはあると考えます。杉原騎手も藤懸騎手も、1年目はかなり苦戦して2年目でそこそこ活躍。今年はさらなる飛躍を遂げたいところです。もっとも、両者とも特別競走の成績はあまり良くなく、
現状のペースでは将来に太鼓判、というところまではいかなさそう。藤懸騎手は今年に入っての初勝利が特別競走で、さらにジャングルパサー号というクラシックも期待できそうなお手馬ができた矢先に無念の故障離脱。早めに戻れるといいのですが。
横山和騎手は父の横山典騎手の関係か、コネクションはそれなりにあるものの、そこからの広がりがあまりない印象。今年の目標は2kg減、来春までに1kg減にできれば万々歳、くらいの感じでしょうか。同期の騎手の中では平場競走と特別競走との乖離が一番小さな騎手ですが、この数でどうこう言っていいかは微妙です。こう言っては何ですが、横山典騎手の引退時に現役でいられるなら上出来では、と…。実は嶋田騎手のみならず、杉原騎手と横山和騎手の特別競走1勝も新潟芝1000m。若手騎手でも扱いやすいコースなのでしょうか、それともこの期に直線巧者が揃ったのでしょうか。
森騎手以下は特別競走騎乗が少なすぎてどうにもなりません。森騎手は武豊騎手並みの長身ということもあり、早くから障碍競走に軸足を移してそこそこの実績を作っていたものの、調教中に、武豊騎手が日記で触れるほどの怪我に遭い休業中。障碍競走は騎手不足なので復帰後もすぐにニーズがあるでしょうし、一定の地位を築けそうですが、昨年は障碍3勝、平地0勝。平地競走ではもう厳しそうです。花田騎手はフリーに転向して早くもジリ貧気味。障碍競走に活路を見出すなど、生き残りのためには何らかの手を打たねば苦しいでしょう。高嶋騎手は特別競走騎乗が少ない以前に未勝利で、競馬学校卒業生では野崎騎手しか経験していない「3年目に入っても未勝利」という段階に突入しています。障碍競走に乗り始めて、アバディ号という有力お手馬ができたり、メジロサンノウ号で穴を開けたりと特に近走は初勝利への期待を抱かせる状況でしたが、好事魔多しなのか、騎手生命すら危ぶまれる大怪我で休業中。生き残り云々より、まずは無事の復帰を祈るしかないです。


まとめです。

△嶋田騎手
△杉原騎手
△藤懸騎手
△横山和騎手
○森騎手(障碍競走のみ、平地競走は−)
−花田騎手
−高嶋騎手

嶋田騎手から横山和騎手までは横一線ではないかと思います。怪我からの復帰が早ければ、栗東所属ということもあり藤懸騎手が最終的な世代トップになるのかなという印象はありますが、一つ上の世代は通算100勝以上がもう2人出ていますし、嶋田騎手でも勝ち星で一つ下の菱田騎手にもう抜かれてしまいそう。全体で見ると地味な、谷間的世代になるのは避けられないように思います。


<参考>
3年目騎手の将来を推測する:http://d.hatena.ne.jp/horsedata/20100105/p1
3年目騎手の将来を推測する2011:http://d.hatena.ne.jp/horsedata/20110126/p1
3年目騎手の将来を推測する2012:http://d.hatena.ne.jp/horsedata/20120207/p1

*1:昨年デビューしながら騎乗馬に恵まれなかった長岡騎手も、栗東留学を始めた途端に安定して10鞍弱と、それまででは考えられない数をこなしていますね。全く人気のない馬を上位に持ってきており、数さえこなせばやれるところを見せています